第2話:あの頃の俺じゃ買えなかった装備
今回は番外的なお話回。翼が「一度は夢見た重課金プレイ」に手を出すお話です。
誰もが一度は考える「ゲームに課金して強くなる快感」、その先にある感情も含めてお楽しみください。
「……買っちまった」
ベッドに寝転んだまま、スマホを見つめて翼はつぶやいた。
画面には、煌びやかな装備に身を包んだ自分のキャラクター。
スマホMMORPG、通称“ヴァルクロ”。
始めたのは半年前。友達に誘われて、最初は無課金でちまちまとプレイしていた。
強敵ボス、ギルドバトル、オークション形式の装備販売。どれも熱いが、無課金には厳しい。
MVPボスから低確率でドロップする“伝説級装備”や“MVPカード”——
それらを持つのは、社会人課金者や配信者だけ。高校生には縁がなかった。
(あの頃の俺じゃ、絶対に手が届かなかった)
でも今は違う。
翼の手元には、異能で得た現金がある。財布にはまだ10万以上が残っている。
放課後、コンビニで課金カードを5枚買い、そっとスマホに入力した。
そして、オークションに出ていた“炎帝の双剣+MVPカードセット”に即決で入札。
結果——即落札。200,000G。
「やっべ……買えた……」
高ぶる心拍数。興奮。ゲーム内で流れるチャット。
『おいおい誰だよ新規で双剣即買いしたやつwww』
『重課金キッズきたwww』
『でもうらやましすぎる』
翼のキャラが、つい先日まで見上げていた最上位装備を身にまとう。
火炎のエフェクトが揺らぎ、ダメージ数値は2倍以上に跳ね上がった。
クエストが溶ける。ボスもソロで削れる。
フレンドからもDMが来る。「別人かと思った」「マジで羨ましい」
(……これだよ、やってみたかったのは)
虚勢でもなんでもなく、強さを“金で手に入れた”実感。
高校生の頃に一度は憧れた世界。
画面を閉じたあと、翼は天井を見上げていた。
現実の翼は、机に課金カードの空きパックを放り投げた。
ゲーム内の強さと、現実の不安。どちらも、確かに“自分のもの”だった。
火炎の双剣は画面の中で燃え続けていたが、翼の中に残ったのは、静かな余韻だった。
お読みいただきありがとうございました!
「金があればゲームで無双できる」——
一度は夢見たそれを翼が実行する回でした。
作者リアルでゲームやってるんですが、重課金やってみたい。
今後、サブストーリーとして、ゲーム上で頭角表す?かも?
次回は、再び現実に戻り、物語本編が大きく動き出します。