70、剣聖
先日の会議の結果、サクヤと俺、そしてミトでの訓練が行われることとなった。王宮の一番大きな野外訓練場にて、王や大臣も見守る中での実施となる。
以前から実験していたサクヤの音楽連携。この技術を、俺は「神剣共歌」と名付けた。
まず最初に思いついた曲は、以前演奏した曲だった。しかし、これはエネルギー消費が激しく、要するに「燃費」が悪いと感じた。そこで、他の曲を探ることにする。
ここで俺が試してみたかったのは、楽器を増やすことだった。戦闘要員の中で最も楽器が上手な者たちを選び、彼らにピッコとスネアドラムを渡した。
俺は出来たばかりのヴァイオリンを手に持ち、ミトには指揮棒を持ってもらった。
これは試験だ。この運用がうまくいけば、良い結果を出せるかもしれない。
「それでは始めましょう。サクヤさん、思うように動いてみてください」
「わかった。いつでもいいぞ」
サクヤが大太刀を握る。俺たちもさっと構えた。
サクヤの手がわずかに震える。それを見た俺たちにも緊張が走った。
ミトが腕を振り上げ、前に突き出す。その合図とともに、俺たちの演奏が始まった。
『オオオオオオオオオ』
サクヤが燃え上がる。
真っ赤な髪が激しく揺れ、まるで炎のように輝いた。屈んでいた身体をバネのようにして大地を蹴り、クロスしていた腕を解き放ち、大空へ駆ける。
「サクヤちゃん!」
ミトの掛け声と同時に、サクヤは急降下。
その自由落下に勢いをつけ、構えていた剣を、試験用の標的へと振るい下ろした。
標的は、中程度の爆発とともに砕け散る。サクヤは後転しながら飛び退き、さらに残っていた残骸へ追撃の斬撃を加えた。
ものの見事に標的は跡形もなく砕け散った。
サクヤはふわりと大地に降り立ち、あの時と同じ優しい笑顔を俺たちに見せた。
「「「「「すごい!!!」」」」」
大歓声とともに拍手が湧き上がる。
俺たちはサクヤに駆け寄り、様子を伺った。
「大丈夫ですか! サクヤさん!」
「ははは……大成功だな」
「ええ、大成功です!」
「サクヤちゃん、かっこよかったよ!」
俺たちはサクヤを労い、この実験の成功を言葉で祝った。
「やるではないか、サクヤ!」
「あ……父上……私は、お役に立てるでしょうか?」
サクヤの困惑した表情が印象的だった。これまで自分に自信を持てずにいた彼女が、父である王に褒められたのだ。
「これは実験だ。まず実戦に向けて検証しなければならんが、成功と見てよいだろう。そうだな、カナデ」
「ええ。ここまで良い結果が出るとは思っていませんでした。成功と言っていいでしょう」
さらに歓声が上がる。
サクヤはグッと唇を噛みしめ、俯いた。
初めて能力を評価されたサクヤ。これまでの苦悩や自分への失望を思い出しているのだろうか。
「サクヤさん、胸を張ってもいいんじゃないですか?」
「そうだよ、サクヤちゃん。顔を上げて、みんなに応えてあげて」
サクヤは歓声に応えた。場はさらに大いに沸いた。
特訓は続き、いくつかの技能をあみだし続け、それからも大きな失敗もなく、この訓練は成功のうちに終了した。




