表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/134

62、横ばい

 いつもの教室。俺たちは新しい曲で授業をしていた。歌とピッコの練習、それに楽譜の読み書きが、いつもの内容である。


「さん、はい!」

「「「〜〜♪」」」」


 今回からミトの教育指導方針で、少し難しい曲を入れていくことになった。ピアノの難易度にはいくつかの段階があるが、ミトと相談して細かくレベル分けをしてある。成長に合わせて習得できるよう工夫されているはずだ。


 輪唱のような曲は比較的簡単なほうだが、ハーモニーとなると一気に難易度が上がる。俺がまずピアノで旋律を弾き、それに合わせて歌う練習をする。主旋律を歌う者たちが音に引っ張られないようにするなど、基礎の習得には工夫が必要だ。


 もっと上手いやり方もあるのかもしれないが、いざ教えるとなると、これがなかなか難しい。演奏しているだけのほうがよほど楽だと感じる。


 教育って、大変なんだな……。

 そう痛感する日々だった。


 ーーーーー


「カナデさま、以前お話ししていた楽器の試作品ができましたのです」


「おお、すごいですね。ちゃんと弦が張ってある」


「がんばりましたのです。でも、やっぱり張力が強すぎて、もうちょっとなのです」


 以前、軽くお願いしていた弦楽器──いわゆる「ヴァイオリン」。まだまだ未完成ではあるが、それなりの形にはなっていた。弓もちゃんとできている。


「ギギ〜〜」

「わぁ、こういう音が鳴るのですね」

「ちょっと弾いてみますね」

「楽しみなのです」

「ギ〜ギギ〜ギギ〜ギギ〜〜〜」


 ──ヒュンッ! ガラガラ!! ドサッ!!


「あ! 大丈夫ですか、ランダさん!」

「……うう……痛いのです……ひどいのです、カナデさま……」

 ランダは吹き飛ばされ、部屋の隅にあった木箱に押しつぶされていた。

 またこのパターンか……。

 なんだかんだで、いつもランダが不幸な目に遭っている気がする。


「ごめんなさい……いい加減、俺も学習しないとですね……」

「カナデさま……ワタシこの役目もういやなのです……」

 早くこの原因を突き止めなければ、と思いつつ、ランダを起こした。


 ーーーーー


「カナデ! 合金ができたよ! いや〜、苦労したさ〜」

 イブキが汗まみれで報告してきた。


「すごいこれはもしかして……『管』ですか?」

「そうそう、これなら水を通しても錆びないっしょ」

「ということは……お湯も大丈夫ですか?」

「うーん、あんまり高温はダメなのさ。あと、不純物があるとダメかもしんないね!」

 つまり、温泉の源泉を通すのはまだ難しいってことか……。


「でも、これでようやく水道を作れますね」

「水道って、つまり貯水地から水を運ぶってこと?」

「そうです。将来的には、すべての家にそれを通して、さらに下水も整備できたらいいですね」


「な〜るほど〜。そんなの、よく思いついたね〜」

「ま、まあ、いろいろ想像力だけはありますから……」

「んじゃ、これをもっと作ってみるね!」


 イブキの技術力のおかげで、生活水準がまた一歩向上する。


 ーーーーー


「ハッ!」

 サクヤが、今朝から稽古を始めた。薬や痛みを和らげる音楽の効果なのか、それともサクヤ自身の体質なのか、驚異的な回復力を見せている。


「完全とは言えないが、このくらいならなんてことないぞ」

「あまり無理しないでくださいね。静養も仕事のうちですよ」

「ははは、それもそうだが……居ても立ってもいられないのだ。やられっぱなしでいられるほど、私は気長ではない」

 やはり、武人として悔しい部分もあるのだろう。正体不明の魔物に、再び挑むつもりなのか……。

 さすがに無謀なことはしないと思うが、なんとしても調査は進めたいところだ。


「俺も何か協力できればいいのですが……」

「以前、君とミトくんで実験していた例のアレ、改めて研究してみないか?」

「ああ、あの……サクヤさんが変貌するやつですね」

 あれを実践でどう活かせるのか、まだ未知数だ。


「当時の曲を演奏したとして、それをどう制御するか。また、制御できたとして、それを戦闘にどう組み込めるか」

「それを試すのが訓練ではないか?」

「そうなんですけど……一番の問題は、また何故サクヤさんが戦闘の最前線に立つのが前提なんですか?」

「何故って、仕方ないじゃないか。私は武人であり、これが生き様なのだ」

「それ以前に……サクヤさんは、この国の王族の後継者です。しかも唯一の。もう、これ以上危険な目に遭わせるのは看過できません」

「さっき協力すると言ったじゃないか」

「そうですけど……今はまだ、その時じゃないです。もう少し情報を集めて、それから精査して、人事をしっかり考えて、体制を整えて……」


「カナデくん!!!」


(……あ、また怒らせちゃったかな? ああだこうだと理屈をこねくり回すのは、ほんと俺の悪い癖だ。でも、こういう言い合いも久しぶりだな……)


 まあ、ここはひとつ、サクヤの怒った顔でも見て反省するか。


「……二人の時くらい、敬語をやめてほしいぞ……」 


 ーーーーー


 ──その頃、ローゲ温泉近くの森へ向かっていた調査発掘隊からの報告が、王都へ上がった──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ