48、拡大計画と新しい提案
「ボエ〜〜〜」
「ボボエ〜〜」
ミトのテラッコヤでは最近、ピッコの授業を取り入れた。文字・数字・記号・表の作り方など、生活に役立つ内容が主な授業だったが、最近はピッコの練習もしている。将来、この生徒たちが土地を豊かにしてくれるだろう。
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サクヤは最近、トリーマの騎乗訓練と護衛部隊の増強に取り組んでいた。各地との交流の際、移動手段はともかく、魔物や野盗への対策として、より多くの人員が必要だからだ。交易を活発にするには、とにかく人が必要。移動できる人が増えれば、道の整備や道標の設置も進み、いずれは観光にもつながる。
先日の視察では移住者がまったくいなかったのが残念だったが、これで状況が変わってくれれば嬉しい。
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ソウリュウとイブキは、共同で護衛部隊のための武器や防具などの装備を作りつつ、水道設備用のパイプ設備にも取り組んでいた。次なる生活水準の向上には、やはり上下水道の整備が不可欠。これが進めば、温泉の発展にもつながるだろう。
ただ、作業を進めるには弟子が必要だ。もっと募集をかけていこう。
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モノは相変わらず酒造りに励んでいる。王宮の大臣たちに好評なため、酒造設備はすぐに最新化され、協力者も増えていた。どんどん増築され、酒蔵は巨大化している。今後、日本酒のような繊細な酒も作れるようになるだろう。
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スクには、今の環境になじんでもらうため、自由に過ごしてもらっている。わずかに採れる薬草や花、野菜を使って、漢方作りに励んでいるようだ。
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「カナデさま〜、試作品ができたのです!」
ランダと楽器の量産を進めるうちに、ピッコより少し長い「フルート」が作られるようになっていた。ピッコのピッチを安定させられるようになったことで、新たな音を持つ楽器を作る流れになっていった。
「〜♪ おお、いいですね。なかなか綺麗な音が出ますね」
「そうなのですか? それならよかったのです」
「これを吹く人を見つけたいですね」
ミトのテラッコヤで配る用、農業や畜産の従事者用、地方の村々に配る用……。結構な数が必要になりそうだ。まずはピッコを教えられる人を増やさなければならない。つまり、先生の先生が必要なわけで、今のままではとにかく人が足りない。
というわけで、ミトのテラッコヤとは別に、音楽の基礎を学べる音楽教室を作ることに決めた。俺、ミト、ランダが中心となり、今までテラッコヤから輩出したメンバーを編成しよう。
まずは王様に相談することになった。
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「なるほど、それはいい考えだな」
「王都の発展に必要不可欠だと思います。俺たちだけでなく、多くの演奏者がいれば、それだけ規模も大きくできます」
「して、何をすればいいのだ?」
「まずは小さな音楽教室から始めましょう。俺とミトで音楽知識の基礎を教えます」
「それはどういうものを教えるのだ?」
「俺とミトが教えるための基礎を作らなくてはいけませんが……『楽譜』を作ってみます」
これは俺がいた地球での知識だ。思い出さなければならないことは多いが、16年の経験がある。なんとかなる。
「『楽譜』……それは一体なんなのだ」
「言葉で説明するより、見てもらったほうが早いと思います」
俺は作成した楽譜を見せた。
「おお……これは何だ?」
皆が感嘆の声を上げる。初めて見る謎の記号に驚愕しているようだ。まあ、見たことがない人からすれば、呪文が書かれた魔導書のようにしか見えないだろう。
「あはは……これだけじゃ意味がわからないですよね。実際にやってみましょう」
楽譜に書かれた簡単な曲、「赤とんぼ」を演奏してみた。
「なるほど。音ひとつひとつがこの黒い模様なのだな」
王様は意外にも素養があるのかもしれない。理解が早かった。
「そうです。これを基礎として教えていけば、口伝よりも早く、正確に、そして誰でも同じ演奏ができるようになります」
“誰でも”——ここが重要だ。
「そうかそうか、それを知識として学べば、わざわざ講師がいなくてもよくなるのだな?」
「まあ、そう単純な話でもないんですけどね。やはり最初は教える人が必要です」
ある種の天才を除けば、誰でも最初は導いてくれる人が必要だ。
「わかった。では人選はカナデとミトに任せる。場所はこちらで用意しよう。他に必要なものはあるか?」
「今、ソウリュウさんとランダさんと話しているのですが、大きな『鍵盤』という楽器を作ろうと思っています。これはですね……」
こうして、音楽教室を作るための準備が始まった。




