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24、実り

 ミトの指し示した方角に、ほどほどの距離を経て、ようやく里といえる人の集落にたどり着いた。

 大勢でドヤドヤと押しかけるのも気が引けたので、まずは俺とミトで静かに尋ねることにした。


「なんズラ? おまえさんたち、どっからきたんけ?」

「初めまして、俺たちはここからはるか東の町、イスト・カイオンから、また北の村から来たものです。こちらで休むことができないか、尋ねに来ました」

 手短かに、かつなるべくわかりやすく説明を済ませる。


「そっかそっか。それはご苦労さん。なんにもねえ場所だけど、ゆっくりしていればいいズラ」

「わあ、ありがとうございます! よかった〜」

 ミトも、久しぶりに人がいる場所に着いたことに胸を撫で下ろす。


「カナデと申します。このこは妹のミト。あと、同行の者が数名おりますが、ご一緒してもよろしいですか?」

「構わないよ。一人も二人も三人も、同じズラ」

 思わず、言葉の違いに驚いた。俺の村とも、イスト・カイオンとも違う響きだ。


「ありがとうございます。それでは連れてきますので」

「おう、そしたらそこの集会所にくるといいズラ。おらもそこにいるズラ」

 俺はミトと、呼び寄せたサクヤたちと共に、村内にある大きな建物へと向かった。


「ほええ、そんな事があるんけ」

 一通り自己紹介や旅の目的、つまりサクヤがカイオン王国からの使者で、なぜ俺たちが向かうのかを、ある程度の音楽の効果も交えて説明した。

(すんげえこともあるんズラね)

(そうズラね)

 なんだか慣れないな。やはり訛りもイントネーションもかなり違う。でも、これも良い試行材料だ。


 ここはトモス村というらしい。先ほど迎えてくれたのは村長で、集会所に来た人たちは皆、人当たりが良い感じだった。


「さっきも言ったけど、なんもねえ場所だ。それでよければ気が済むまでいればいいズラ」

「そのお言葉、ありがたく頂戴いたします。助かりました」

 サクヤは堂々としていながらも、どこか恐縮した様子を見せる。

「そんなかしこまる必要はねえズラ」

「いえ、出来れば数日居させていただきたいので、なにかこの村のお手伝いもさせてください」

 先ほど話した、俺とミトの音楽の効果を、少しでも実感させたくて。

「そうか? んじゃその『うた』ってやつで村をみてもらっていいけ?」

 そう言われ、俺とミトは村長に連れられて村内を見て回った。


「変わった木がおおいですね」

「そうなんズラ。この木が枯れてるおかげで、うちの村は貧しいズラよ」

 一番気になったのは、俺の村では見たことのない樹木だった。枯れ木に近い感じではあったが、まずはその木に向かって歌と笛を奏でる。

「はぁ……なんだか心地いいわねえ……」

「ううう!!これは立ってられねえズラ! でも気持ちいいズラ!」

 村人の反応は地域差があまりないようだ。その傍らではサクヤたちもうっとりしていた。

 その他にも、できることがありそうな場所は、手当たり次第に歌いに行った。


 やはり何より、大きな山が素晴らしい。

「あれは『カグラ山』ズラ」

 霊峰とでも呼ぶのだろうか。俺はその山を眺め、思わず手を合わせた。


 その日の夜は歓迎会が催された。

 村の人たちは温かく、わずかな食材ながらももてなしてくれた。

 ありがたい。こういう人との交流は本当に大切だと思う。

 俺たちも旅の備蓄や、途中で狩った獲物の肉、さらには村の特産を出して、交友を深めた。


 次の日の朝。

「おにいさんたち!起きるズラよ!」

 予想していたものの、こんなに早く効果が現れるとは思わなかった。

 集会所には布団を敷いてもらい、久しぶりのお布団と屋根のある部屋で、ぐっすりと眠っていた。しかし、その惰眠を貪る暇もなく、叩き起こされた。


 そして、俺たちは村内を見渡して息を飲んだ。

 スーナ村やノッサ村、イスト・カイオンではまず見かけなかった「果物」が鈴なりに実っていた。


「わあああ!ぶどうズラ!ひさしぶりに見たズラ!」

「こんなたくさんついてるのは、いままで見たことねえ!」

「おかあちゃん、この実は食べられるんけ?」

「おい! こっちは桃だ!」

「こっちはさくらんぼズラよ!」


 俺とミトは見慣れた光景だったが、サクヤたちもだいぶ驚いていた。

「カナデくん……これは……すごいぞ! これを王都にも!」

 よしよし、これで思った通り、効果を確かめられてよかった。ちょっと実験みたいな感じで申し訳ないけど、結果が良ければそれでよし。

「サクヤさん、まあ落ち着いて。王都でも期待が持てそうですね」

「そうだぞ! きっとうまくいくぞ!」

 喜んでもらえるならそれでいいよ。


 さて、村長たちと話をしてこようか。

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