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120、神々の能力

「なんと……!」

「ランダさんが……?」

「えええ!!??」

 三者三様、それぞれの反応が返ってくる。


「まあ、最初にも言ったように、荒唐無稽な話ではありますよね。でも俺がこうして異世界で復活したのも、ゆきさんがランダさんとしてこの世界で復活したのも——すべて『オウマトレイズ』の能力の結果です」


「どうしてそれがわかるの?」

 ミトが口を開いた。俺が話し始めてから、初めての発言だった。


「『それがわかる』としか言いようがないんだけど、俺には『永遠えいえんに咲く花』という能力がある。それは、『その大地に、その海に、その天に、永遠とわなる美しき花をもたらせよ』という意味を持つ能力で、地球、日本で神としての力だった『悠久の花の調べ』を受け継いだものだと思う」


 そして、俺は一呼吸置いてから続ける。


「その能力を最大限に引き出してくれるのが、この『オウマトレイズ』——ゆきさんなんだ」

 俺はすっと手のひらを向け、ランダを示す。


「では、『フラウニティ』という名は……?」

 サクヤが問いかけてくる。


「はい、もちろん俺のことです」


 英雄名『カナデ・フラウニティ』

 雷鳴の英雄神『旋律の継承者』


「おお……」

 と、みなが低く唸った。


「ランダは、ど、どうなのじゃ……? その……日本でのランダはどうだったのじゃ?」


「ランダさん、つまりゆきさんは、もちろん俺と同じ『家族』でした。血筋的にはかなり遠かったですが、先祖をたどると同じ系統に行き着きます」


「では、その時のランダにも……?」


「はい、能力を持っていました。枯れた花すらも復活させられる『太陽と光の神威天恵かむいてんけい』。そしてこの世界では、『天を照らす大いなる生命いのち』という力に昇華されています。意味は、『暗闇に宿る一天いってんの星、その光で枯れた大地を蘇らせよ』ということ。つまり、奏とゆきさん、この世界では俺とランダさんの力で、世界を復活させることができるだろう、ということです」


 言い終えた俺は、皆の反応を確かめるように視線を巡らせた。


 長い説明だった。みなついてくるのが大変だろうとは思ったが、まずは理解してほしい。


「『オウマトレイズ』とは、古代の神様なのでは?」

 と、サクヤが再び問う。


「俺もそれは疑問に思ってました。ゆきさんが亡くなった時にはもうこっちの世界の『オウマトレイズ』はいたのか、それとも転生したのち、『オウマトレイズになった」のか。その辺りの軸がわからないです。シャロウィンの遺跡が正確に何年ごろにできたのかまだわかりませんが、きっと古代の人が『未来に復活すること』を予言して、あの碑文に記したんじゃないかと思うんです。あくまで推測の域を出ないですけど」


 これから遺跡の解読が進めば、いずれ真相が見えてくるはずだ。


「おにいちゃんとランダちゃんは、亡くなった時は違うけど、こっちの世界には同時に来たの?」

「時系列的には同時じゃない。明らかにゆきさん、ランダさんがこちらの世界に先に来てる。でも、そのあと何かがあって、俺もこっちに来た。たぶん『死』が直接のきっかけではないと思う」


「もしかして、おにいちゃんって……」

 ミトが何かを察したように、おそるおそる口を開いた。


「そう、もともとカナデは、カナデとしてこっちで生まれた時から奏だった、ということかもしれない。今のゆきさん、ランダさんみたいに、『途中で生まれ変わったことに気がついた』のかもしれないね」


 ミトはぽろっと涙をこぼす。なにかが払拭できたかのような、安堵の涙と笑顔だった。


 俺はミトの頭を撫でながら、そっと続きを話す。


「さて……これから何が起こるのか……。シオン、ある魔導士が言っていたんだ。『神々の争いが始まる』って。そして『その争いはもう避けられない』とも。さらに、サクヤさんがその戦争の『中心人物』になる、とまで言われていた。何を意味しているのかは、まだわからない。でも、できるだけ戦争の勃発だけは避けたいと思っている」


 みなが静かにうなずく。


「俺とミト、そしてサクヤさんは、その中でも『八英雄』という重要な地位にいることは間違いない。俺たち三人……いや、もしかするともっと協力者がいるかもしれない。その者たちと力を合わせれば、何かを成せるかもしれないし、戦争を回避することだって可能かもしれない」

 そして

「シオンという者は『八英雄の残りカス』と言っていたが……彼には『記憶改竄』という恐るべき能力がある」


 英雄名『シオン・エステル』

 時と記憶の英雄神『追憶の覇者』


 「それがあの魔導士の正体です」


「残りの……あと四人は?」

 ミトが指を数えながら聞いてくる。


「今のところ、それだけだ。まだわからない。もしかすると、もうそばにいるのかもしれない」

 ふと、お互いの目が合う。イブキは口笛を吹いて、「我関せず」といった様子だ。


「シオンちゃんみたいに、敵なのかなぁ……」

 ミトが不安そうに、みんなを見つめる。


「まだ決まったわけじゃない。シオンも、もしかしたら……いや、こういう考察は無駄だ。やめておこう。とにかく、これで俺たちの謎は一つ解けた。あとは王様たちに報告して、俺たちのすべきことを考えよう」


 そう言って俺は朝食の準備に取りかかろうとしたが——


 結局話は元に戻り、俺とランダの関係についての尋問大会となるにぎやかな朝食となったのだった。

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