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102、働きすぎ

 地下図書館のスケッチを終えた俺とミトは、王や大臣たちと検証するために会議室に集まっていた。

 ある程度、壁に描かれていたものを写し取りながら簡単に見分を行っていたため、地上に帰還してからの作業はわりとスムーズだった。


「まず、この東西南北にそれぞれ描かれていた“動物”の種類と、文章の内容は、この貼り出した資料の通りです」


 方角に対応する内容と動物の種類

 東:朱雀 ― 火

 西:白虎 ― 雷

 南:玄武 ― 風

 北:青龍 ― 水


 方角に対応する作曲家と楽曲

 東:シューマンの指定された曲を奏でよ。魔導書XXXに記す。

 西:リストの指定された曲を奏でよ。魔導書XXXに記す。

 南:ベートーヴェンの指定された曲を奏でよ。魔導書XXXに記す。

 北:メンデルスゾーンの指定された曲を奏でよ。魔導書XXXに記す。


「以上です。この内容から考えるに、一つはすでに達成済みと見ていいと思います。王都西方面にある、攻略済みの遺跡です」


「……方角がやや違うのではないですかな?」


 地理担当の大臣が言う。


「中心をどこに設定して方角を決めているかという問題はありますが、この“作曲家”に対応する内容で、南に位置するもの——たぶん『遺跡』だと思うんですが、それは達成済みなのかなと」


「動物の意味とは何でしょうか?」


 と、別の大臣が尋ねる。


「この『火・雷・風・水』と記されている通り、属性を持った『動物』を模した何かであると考えられます。王都西にある遺跡、この場合『南:玄武 風』に該当しますが、思い出してみてください。あの遺跡の外観、確かに『玄武』に似ていました。そしてあの調査の時に苦労した『旋風つむじかぜ』。あれこそ『風』の攻撃属性だったのではと考えています」


「なるほど……残りの“作曲家”に対応する魔導書は、これから見つける必要があるのでしょうか?」


 考古学担当の大臣が問う。


「そうですね。魔導士の方が見つけてくだされば話は早いのですが……」


 俺は、そっと薄紫色の者へと視線を向けた。


「あはは、これはなかなかの難題だね。でもわかったよ。探し出してみるね」


「ぜひ、お願いします」


 俺は少し溜めてから、深々と頭を下げた。


「まずは王都西の遺跡——この場合、『南:玄武 風』……ややこしいのう。とにかくこの遺跡の文字の再調査だな?」


 王が問いかけてくる。


「そうですね。あの外形に刻まれていた文字、そして内部の古代文字の解析が先です。すでに写生は終えていただいてるので、これから俺とミトで取りかかるつもりです」


「いや、もうおぬしたちは下がって休むと良い。他の文官でもある程度の解読は可能であろう。今回も見事な手柄であった。カナデ、ミト、おぬしたちは少々働きすぎであろう。暇を取るとよい」


「ははっ」


 ありがたく、しばらくお休みをいただくことにした。


 ーーーーー


「というわけで、しばらくお休みをいただくことになりましたよ」


「そうかそうか、よかったのう。ではワシらも少し休むかの?」


「おとうちゃん、それは大賛成なのです。ワタシもちょっとお休みが欲しいのです」


「そうだね!みんなちょっと、こんを詰めすぎだよね!」


「てへへ、アタシは毎日お酒を作って飲んでるだけ……」


「モノだって、ぼくと一緒に前線に立ったじゃないか」


「スクくん、帰ってきてたんだね」


 と、いつもの家族で夜ご飯を囲んでいた。


「どうだ、みんなで温泉でも行かぬか?」


「わぁ、それいい!すごく楽しそう!」


 ソウリュウの提案にミトが飛びついた。


「行くって、どこにだい? 温泉ならうちにもあるじゃないか」


「いやいや、おねえちゃん、ローゲ温泉だよ。あそこのお湯は一味違うんだよ」


「ああそっか。スクは行ったことあったっけな」


「てへへ、ローゲのお湯に『にっぽんしゅ』をお盆に浮かべて、飲みながら浸かりたいねえ」


((((((そんな悪魔な〜))))))

((((((めっちゃええやん〜))))))


 などと皆で浮かれていた。


「でもさ、私たち全員でローゲ温泉に行くってなったらさ、赤い髪のあの子が、燃えるような鬼になりそうじゃない?」


((((((「たしかに〜〜〜〜」)))))



「ふざけるんじゃない!!!!!!」



 入り口から轟く怒声とともに、天地がひっくり返るような波動が俺たちを襲った。


 ソウリュウは星を瞬かせて気絶し、ランダとモノはゴロゴロと転がって壁に激突。

 ミトとスクは抱き合ったままスクリュー回転して地面をスライドし、イブキはなぜか天井に頭が突き刺さっていた。

 食器や家具はガチャガチャと吹き飛び、土ぼこりをたててガタガタと壊れた。

 俺は普段かけていないメガネのズレを直し身体を起こしながら、恐る恐る後ろを振り返る。


 そこには……夜叉の権化のごとき鬼のようなサクヤが、シューシューと湯気を立てて仁王立ちしていた。


「またお前たちは私がいない間に……こっそりと楽しい話をして……」


「い、いやサクヤさん、あなたを誘わないなんて一言もいってな」


「いいや!!さっきのミトくんの発言は明確に『誘わない流れ』だった!!!!」


 サクヤは地団駄を踏んでいる。


「いやいや姫様、前にも申した通り、ワシらとばかりつるんではいかんのじゃて……」


「たまには……いいじゃないか……私だってダーヒ牛を……食べたい……」


「そうだぞ!!」


 と、さらに後ろから声が響く。


「余もそろそろローゲに行きたいと思っておったのでな。連れて行ってくれ」


 ——というわけで、ローゲ温泉旅行、一行決定。

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