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第二話 帝国ディルランドと新たなる才能

今日から18時に投稿できる様に頑張ります

大国ディルランド帝国


ディルランド帝国——それは、古の大戦を唯一乗り越えた武威と誇りを持つ大陸屈指の超大国である。

各国から恐れと敬意を集めるこの帝国は、代々皇族から皇帝が選ばれ、その権威を守るために若き者たちは日々研鑽を積んでいた。


荘厳な白亜の壁を背に、一面の草原を五台の馬車と騎馬隊が駆ける。

四台の馬車が中央の一台を囲む陣形をとり、騎馬隊が一定の間隔を保ちながら周囲を警戒していた。


その中央の馬車は、ほかの馬車をも凌駕する威厳と装飾を誇っている。

そこに乗るのは、ディルランド皇族の一人——セレナ・テオール・ディルランド。


馬車の中では、三人の侍女が敬意と親愛を込めて主へ言葉をかける。


「遂に到着ですね、セレナ様」

「首席入学、おめでとうございます。例年首席合格者は生徒評議会への勧誘が確実なので……」

「生徒評議会入りは間違いありませんね」


尊敬の念を隠さない侍女たちの言葉に対し、セレナは余裕の笑みを浮かべた。


「首席合格も生徒評議会への加入も、私の計画通りです。皇族として当然の結果でしょう」


彼女は自らの才を疑うことなく、強い自信をもって言い放った。

確かに彼女の才能は、生まれながらにして突出していた。だが、それだけではない。

彼女は膨大な努力を重ね、ダイヤモンドの原石を磨き上げるようにその力を鍛え続けたのだ。

侍女たちもその事実を理解しているからこそ、「当然」と納得していた。


「……それにしても馬車での移動は退屈ですね。私なら魔法で学院まで瞬時に行けるのですが」


窓の外を眺めながら、ふと愚痴をこぼす。

しかし、侍女たちはすぐさま真剣な表情で制止した。


「セレナ様、それはなりません!」

「いくら速く移動できても、お一人での移動は危険です!」

「学院には帝国の有望な者が多く集まっています。その方々を率いる立場のセレナ様が、側近もつけずに入学なさるのは不適切です!」


不敬とも取れるほどの勢いで諫言するが、それは長年仕えてきたからこその忠言であり、セレナ自身も理解しているため、咎めることはしなかった。

そうして、久しぶりに気の置けない侍女たちとの時間を楽しんでいたが、次の瞬間——


セレナの表情から笑みが消えた。


魔法の気配を察知し、彼女は視線をある方向へ向けた。


「隊長! 前方やや左側の丘の向こうで戦闘が発生しています!」

「ああ、感知している。しかし、我々の任務は殿下を無事に送り届けることだ」


騎馬隊を率いる隊長は、冷静に部下へ指示を出す。

戦闘に介入すれば、助けられる命もあるかもしれない。

だが、第一の優先事項は皇族の護衛である。


「……了解しました」


部下が指示に従いかけたその時——


「‼︎ 全隊員、球体型魔力障壁を展開せよ!」


隊長が即座に指示を出し、拡声魔法で伝達。

直後、全員が誤差なく魔力を解放し、陣営全体を覆う魔力障壁が展開された。


その瞬間、左手の丘が吹き飛んだ。


轟音とともに大量の土砂と瓦礫が降り注ぐ。

騎士たちは防壁で防ぎつつ、土系統の魔法で視界を確保し、すぐに体勢を整えた。


そして、土砂が晴れるとそこには——


巨大なクレーターと、新たに形成された丘。


「アハハハハハッ! 雑魚がでしゃばるな!」


狂気じみた笑い声がクレーターの中心から響く。

そこに立つのは、ダメージの強い白髪の青年。


彼こそが、その破壊を引き起こした張本人だった。


白髪のウルフカット、鋭い目つき、顎から左眉にかけての傷。

左右で異なる瞳の色——右目は赤、左目は白。

まるで猛獣のような気配を漂わせている。


だが、その姿に不釣り合いなものがあった。

彼が着ているのは、帝国魔法士官学院の制服。


「ったくよォ! アイツらどこ行った? 吹っ飛ばしてなきゃいいが……まあ、どうでもいいか」


白髪をかきながら辺りを見回していた彼の視線が、騎馬隊へと向けられる。


「……ッ、糞貴族の御一行様かよ。だっっる……」


彼の目が、馬車に刻まれたディルランド皇室の家紋を捉えた瞬間、苛立ちが増した。


「そこの学生、これは君の仕業かな?」


騎士たちが問いかけると、青年は小さく舌打ちをした。


「はぁ〜、だっっる」


そして、次の瞬間——


爆発的な速度で東へと疾走した。


彼の姿は、爆音とともに一瞬で消え去った。


「相手は学生だ。そう急ぐな」

「すみません、隊長」


剣を抜きかけた部下を制し、隊長は余裕の笑みを浮かべる。


「しかし……驚きました。私の一撃を防ぐとは」

「防いだ、か」


隊長は東へ消えた青年の方を見つめ、微かに微笑む。


「まだまだ青二才だな……」


そして、馬車の進軍を再開させた。


「夕刻になる前に殿下を学院へお連れする。急げ」


傷を負った青年


遠く離れた大樹の上。


先ほどの白髪の青年が、左腕の傷を見つめながら呻く。


「クソが……いてぇな、おい!」


赤黒い血液が制服を染める。

だが、次の瞬間——


傷がみるみるうちに塞がり、完治した。


「……クハハハッ! つえぇなぁ……」


彼は満面の笑みを浮かべた。


そして、自らの制服の状態を見てため息をつく。


「……この制服、どうすっかな」


ズタボロになった制服を見つめながら、彼は静かに呟いた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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