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第一話 終焉

赤黒い雲海が天を覆い、大地に怪しげな光しかもたらさない、正に魔界の様相の世界が広がる。


天から見た大地もまた悲惨な光景が広がっていた。

どす黒い色に変色した川が増水し、彼方此方に流れているかと思えば、突発的に発生する大地震が大地を揺らし、地割れと共に歪な地形へと変動する。


木々は焼失し、生命の灯火は薄れ行く、混沌溶かした劣悪な環境下で争う者達がいた。


〝ディルランド帝国、帝都テオール〟


帝国最大都市にして首都、帝都の中央に聳え立つ重厚と絢爛を兼ね備えた帝城。

慌ただしく場内を行き来する者がいる中で、上層部の大部屋にて帝国を代表する重鎮らが今後の行く末に懸念し、日夜会合を行っていた。


「……第十巨防御壁まで戦線は後退した」

「東の海洋都市は壊滅的だぞ」

「これ以上の進行は許されない」

「諸外国は何をしておる」


告げられた報告に苛立ちを露わにする者らを咎めるものはいない。この場に解決方法を出すことは現段階では不可能であると答えは出ていたからである。


「皇太子殿下、此処は東に戦力を集めるべきでは」


激怒と焦燥が入り混じる室内にて一歩引き、会議を俯瞰している者が議会の長へと問いをかける。

その敬称を耳にしていた者らは先程の苛立ちを潜め、長たる皇太子と呼ばれた端麗の青年を見やる。


「確かに援軍を出さねば、東は突破され、その際に被る被害は第十巨防御壁を失うほどとなるだろうな。その場合、第十巨防御壁の民衆を受け入れなくてはならなくなる……が。」


皇太子はそれ以降はお前が話せと先程、自身に問いを投げた者へと目で合図を飛ばす。


「可能ではあります。ですが第十巨防御壁内人口は帝国の二割程おり、更には食糧地としても広大であることから失った場合、後々至る所で問題が発生することは間違い無いかと」

「だろうな、更に第九、第八と突破されるようなことがあれば、受け入れるなど到底不可能となってくる。さて、この事態をどう変えるか?」


この問いを答えは何度繰り返されようと良案など出てくることなく、同じ下りが何度となく繰り返されていた。


「陛下はどちらに?」

「父上は半隠居と言うこともあり、現在は私ですら動向を知り得ない。だが、私達がこうしている間に、自体は急変するやもしれない」

「それは……どう言うことで?」


何か予見するかのように先ほどから冷静な皇太子は、戦乱と化しているであろう東方を見て呟く。


〝ディルランド         〟


白亜の巨空間にて今行われていることは後世の世で限られた者しか知り得ないであろう秘匿される救世活動。


「陛下、傑作品らが各地に飛び、被害は最小限にとどまっております。」

「期待通りの性能は発揮したと思っていただいて良いと思われます。」

「死者の数も許容範囲ない、港の死守はできなかったものの、傑作品にしては最良かと。」


白衣を纏う、不健康な白すぎる肌に華奢な体躯の男女らが壇上の上で鎮座する者へと膝を突き、報告をしていた。


「傑作品としては今までのシリーズと比べ、性能は上がっているが……ワシの国をこうも荒らし回るとは、神聖教国は後で潰す」


報告を聞き上機嫌が、怒りへと変わり、自らへつけられているわけでないにもかかわらず、白衣の男女らは震え上がり、硬直してしまう。


「陛下、今は事態の収集が先決と思われます。陛下の一言で私が最高傑作品らを引き連れ、元凶もろとも消してきましょう」

「ダン、近衛騎士団総長のお前がワシの側からは離れることは許さん。“矛”と“盾”を行かせろ」

「はっ」


部隊が編成され、戦場へと帝国の最高峰が投下された。


〝第十巨防御壁外〟


絵画などに描かれている、どこか遠くの世界で行われていたであろう激しい戦いだと信じたいが、この場は現実であり目の前では地獄の様相かと錯覚する非現実がそこには広がっていた。


練度の高い魔法で防御陣地を作り上げ、攻撃魔法の一斉行使で一掃する魔導師隊。

地面を尋常でない速度で疾走する黒い異形の生命体が防御陣地に接近するのを迎え撃つ歩兵隊。

海上に浮かぶ魔導戦艦が火を吹き、両サイドから戦線拡大を妨げる海兵隊。

風の魔法の適正値の高い魔導師らが飛行し、上空より爆発物を投下し、敵戦力を大いに削る空撃隊。


強国たるディルランド帝国の陸海空に魔導師の力は、この世に存在せぬ、異形に対しても、遅れをとることなく、対抗し得る軍団である。


しかし、未知の相手は黒紫の図体に、個体別に形態が異なるなど規則性はなく、制限無く地平線にかすかに目視できる黒い渦より湧き出ていた。


途方もない数といつ終わるかもわからない状況下に屈強な帝国兵も戦意が薄れつつあった。


ふと天を仰いだ兵士は自陣の上空で空間が揺らいでいることに気づき、そこから感じられる魔法力に驚き、続け様に兵士は天を見やる。


上空では一点を起点にワームホールが形成され、幾人かの人が突如としてこの戦場に出現した。


帝国全兵士が攻撃をしつつも、敵の出現と懸念する。

しかし、出現した彼らが纏う軍服が帝国のものだと認識すると一気に戦意が湧く。


彼らほどの人知を超えた魔法力を持つ者が味方、つまりは援軍。


しかし、疑問に思う者も多い、何故なら帝国軍において元帥以下、どの位の軍服にも該当しない黒衣の軍服集団。

彼らは風魔法に特化した空軍の兵同様、出現地より微動だにしない。


瞬間、爆音が轟き、ソニックブームが衝撃波として吹き付けた。


猛スピードで突撃した援軍は才能があり鍛え上げられた屈強な帝国兵ですら、距離が離れて漸く目で捉えられる程までに突質した魔法力を見せつけた。


彼らならこの戦況を打開する最大の一手となりうる、そう確信した帝国各軍の兵士は咆哮し、奮起した。


〝戦地•海上〟


予兆もなく数日前に現れた黒渦と呼ばれる転移系統の魔法が支柱であり、これを破壊することが第一目標となる。


天を疾走する黒衣と白衣の帝国兵は一直線に進みながらも、白衣の一人の指示で幾重に分かれ、各々が進む方向へと直進する。


各方面に散った同業者に目も向けることなく自身は黒渦へと直進する。


眼下では湧き出た黒い異形が密集し、積み重なった黒い海となって蠢いていた。

積み重なったそれは、山の様に肥大化し、絶えず黒い触手状となって幾千、幾万が津波のように飲み込もうと伸びる。


『……《転移》』


飲み込もうとする直前、姿が掻き消えたかと思えば、波の反対方向に音もなく現れ、進み続けた。


後方で巨大な音がしたと思いや、再度襲う触手が並走しようと伸びるが、男の速度に追いつくことが出来ず、先回りし襲いかかる。


しかし、男は無数の触手を最小限の動きで、容易く通り抜け、囲まれた際、先ほど同様に突如として掻き消え、進んだ先に現れた。


繰り返される一方的な攻防は回避の一点で、攻防にもなり得ないものであり、こちら側の目的地への到達と言う目標だけが成された。


「帝国に仇なす害は排除する『転送』」


暴力的な魔力を垂れ流す黒渦の付近で急停止し、手を翳せば、白色の鞘に金の装飾の剣を手にする。


鞘より抜こうと思考すれば気化したかのように霧散、無色透明な剣が姿を見せる。


そこに存在するのかも危ういほどの存在感の低さであるが、男が魔力を通した途端、七色の輪行が剣を撫でるように走り、虹色の剣となった。


指示を出した通り、各所で規模、威力共に申し分ない魔法が行使される中、自らもそれに負けじと剣気を最高とし、上段に剣を構える。


螺旋状にしたから突き上げる触手、覆い被さるように波打つ触手、それらが男に触れようとするも弾け飛ぶ中で、大気が振動し、光力が徐々に男すらも飲み込み七色も掠れ、白一色と化す。



「《終焉ジ・エンド》だ」


一瞬の静寂が世界を支配した。

瞬間、白い斬撃を中心に七色の斬撃が黒渦へ進み、進行上を浄化するかのように黒が消失する。


上段から下段へと放り下ろしたまま進行方向上で斬撃と黒渦の衝突。


『戦場から一時離脱しろ、転送』


指示を飛ばし、遥か後方で転移した先では黒と白の直径数キロに渡って大爆発が起こる。

兵士たちは眼前の光景に絶句し、身構える。爆発の衝撃は大海を蒸発させ、次元が歪む様な錯覚を覚えた。

帝国軍の戦場は瞬時に思考はできたが、行動する間もなく、衝撃波に吹き飛ばされる未来を前にする。


『盾を展開しろ』


突如、自陣を含む衝撃波から帝国陣営を守るように一直線の魔力障壁が展開され、衝突音が鳴り響く。


しばしの時間が経過し、黒渦が存在していた地点を注視していると晴れ渡った天候に海水の雨が降り注ぎ、巨大な虹が勝利の喝采をあげよとばかりに煌めき、兵士たちが雄叫びを上げた。


しかし、男と仲間らは即座に天を見やり、西へと移動する異形の魔力を察知する。


『転移』


各方面に散っていた突如として現れ、戦場を勝利へと導いた帝国の英雄らは出現時同様、誰もがその勇姿を拝見することなく、忽然と姿を消した。



〝ディルランド         〟



けたたましいサイレンが所かしこで鳴り響く中で、あたふたと冷静さを失い、無意味に右往左往する者らがいる中で皇帝とその護衛のみが事態を冷静に把握していた。


「陛下、どうやら魔力感知でこちらを脅威と見做したようです。敵が急接近しています。」

「“脳”の魔法を厄介と認識したのだろう。さてどうするか……………」


司令室で行使されていたその能力を察知し、驚異であると正しく判断するとは、常識に範囲外の存在すぎた。


「皆はそろっているな?」

「はい、先程こちらに戻ってきました」

「そうか、ならばなんとかなるやもしれん。作品らをここへ。」


玉座に座する皇帝陛下を前にして、皆一様に主の命が下るその時を望んでいた。


「世界を揺るがす危機に対し、我ら帝国が出現地からも近郊であることから狙われ、未曾有の危機を迎えようとしている。事態は急変した、ワシでもわかる“矛”の一撃で魔力が乱れ、奴は魔力爆破寸前だ」


皇帝は臣下の礼をとる者らを見やり、決意を露わにする。


「最後の命だ。“矛”“脳”及びそれに属する作品以外の傑作品は身命を賭してこの地を死守せよ」


命が下されると同時にその者らの姿は掻き消えた。

表情に過ごしばかりの憂いを残しつつも、皇帝は白衣を纏った数十名の者らへと目を向ける。


「次にお前達はワシの手足として十分な働きをしてくれた」

「光栄にございます、皇帝陛下」


皇帝の瞳は先程の魔導師らに向けていた輝きはなく、ただのほんのばかりの努力を褒め称えたかのような言葉のみを、彼らの一生の働きに対して送り。


「ご苦労であった、休むがいい」


皇帝が心意を読み解いた彼らはまるで着火剤の如く、身体の内から炎が上がり、肉体の一切を気化し、そこには真紅の絨毯が広がるだけであった。


「陛下」

「…始まったようだな、急がねばならんな」


言葉とは裏腹に皇帝は焦りを見せることなく、先ほどとは違い柔らかな表情で、自らに征服する最高傑作と呼ばれる兵を見やる。


「此度の最悪を乗り越えた帝国を支えるために、“脳”及びコマは“矛”と共に眠り、未来へ行け。」


前々にいる老齢ながらも大国を歴代同様強国とし、国民に平和を享受し続けた賢帝の面相に少しばかりの微笑みが伺えた。


黒より黒く、白より白い。なんと表現しようか例えようがない強制的な眠気でもない睡魔が自身の魔法によってもたらさせ、仲間諸共引き摺り込み、仕える皇帝の一瞬の微笑みを最後に意識が途絶えた。

作品を読んでいただき、ありがとうございます。


いつまで経ってもアニメ好きと異世界転生妄想がやめられない大きな子供です。

これからこの作品を執筆していきますので、応援の方をよろしくお願いします。

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