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私は、走った。

作者: motty

私は走った。

いや、走らされているといって過言ではない。

なぜなら自分の意思で走っているのではないのだから…。

ただ、何かから逃げるわけでもなくひたすら走る。

どうして走るのだろう…。

そんな思いが頭によぎる。

わからない…。

自問自答しながらひたすら走る。

これ以上走ったら息が続かない。

私は、立ち止まろうと思った。

しかし、足は言うことを聞かず私を走らせようとする。

何か急ぎの用事でもあったかしら…。

私は私に聞く。

しかし私は、何も答えずひたすら私を走らせる。

呼吸ができなくなりそうになったとき私の足は止まった。

やっととまった。

私は、安堵した。

呼吸を整えてから私は辺りを見回した。

周りにあるのは家、家、家…。

はっきり言える事は、そこは私が知っている場所ではなかった。

どこなのか誰かに聞きたいのは山々なのに見渡しても誰もいない。

家の中に誰かいる気配もない。

ここは一体どこなの?

私は、不安に狩られてその場にうずくまってしまった。

泣きたい…。

私は、走る前までの記憶を思い出してみた。

友達と喋りながらショッピングに行って、近くのカフェで昼食をとって、

その後、別れて家に帰る途中だった。

そしたら急に私の足は、早歩きになり、小走りになり、走り出した。

私の意志に反して勝手に走り出した。

何か怖い思いでもしてないのに…。

その時、後ろから足音がした。

誰か来る。

そう思った瞬間、足が再び動き出し走り出した。

えっ!

ここはどこなのか聞こうと思ったのに足音とは反対に足が動く。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

呼吸を整えただけなのでまだしんどさが体に残っている。

「ちょっ、ちょっと止まりなさいよ。」

足は止まってくれない。

私は、走りながら後ろを振り返った。

足音はするが、姿が見えない。

歩いてる?

いや、向こうも走ってる…。

「どうして、言うことを聞いてくれないの?」

私は、足に聞くが足は何も言わない。

もぅ駄目…。

私は立ち止まろうと思ったが、足はひたすら動く。

足が痛くなってきた…。

私は、後ろを振り返る。

姿は見えない。

足の筋肉がおかしくなってきた。

痛いというよりも震えている。

急に足が止まったので私は上半身だけ蹴躓いた状態になった。

足は、走っていた方向と反対、つまり足音がしている方向に向いた。

えっ!

私は驚いた。

何でそっちに向くの?

足音は、しなくなっていた。

逃げ切った(?)

私は思った。

だが、違った。

足音は、私が走っていた方向からしだした。

向こうに回り込んだ?

それは無理だと私は思った。

なぜなら私は走っているときに左右の道を見ていたがどこにも曲がれるような道はなかったからだ。

どうやって…。

私は怖くなった。

何かとてつもないものに追われているのではないかと…。

逃げなきゃ。

私は、足の意志に従うことにした。

走る、走る、走る…。

向こうも私を追いかけてくる。

また立ち止まって反対に向いて走る。

また、また、また…。

だんだん反対に向く時間が短くなってきた。

もう逃げることはできない。

片方の道からしか足音がしなかったのに左右両方から足音が聞こえてきた。

袋のねずみとはまさにこのことだ。

「来ないでっ!」

私は、叫んだ。

しかし、足音は鳴り止まない。

足はというと、止まった状態である。

足音が近くなる。

私は身じろぎ誰かの家の壁に寄りかかった。

足音がどんどん近くなる。

私の足が震えだした。

私は怖くなって目を両手で覆った。

足音がやんだ。

私の目の前で…。

私は、指の間からそれを見た。

それは、黒い影だった。

「キャー!」

叫び声が響き渡った。

私は、見た。

黒い物体が私を見ているのを…。

私は、腰を抜かしてしまい動くことができなかった。

黒い物体は、二つ。

私は、ゆっくり起き上がった。

何もしてこない…。

ただ、私を見つめるだけ。

見つめるといっても顔は見えない。

私は、黒い物体を見ながらゆっくり壁づたいに歩いた。

黒い物体は、ゆっくり私と同じ幅で動く。

お願い、来ないで。

私は、心の中で思いながら歩く。

黒い霧のような物体。

私の足は、私の意志で動いてくれる。

それだけでも私は嬉しかった。

私は、走った。

あれから逃げないと…。

私は、振り返った。

黒い二つの物体は、一つの大きなものになっていた。

私は、それでもかまわず走った。

相手が何なのかも分からない。

走って、走って、走って…。

かまわず追いかけてくる。

ようやく私は自分が知っている道に来ることができた。

私は、助けを求めようと大通りへと走った。

あそこなら人が沢山いるはず…。

私は、大通りへと出た。

しかし、人は、一人もいない。

何で?

私が友人と別れたのは午後5時ごろ。

だから今の時刻は午後6時過ぎだと思った。

まだあそこは人がいると思ったのに誰もいない。

私は、この光景を見て不安になった。

家に帰ったら何とかなるかもしれない。

大通りを抜け歩道橋の階段を駆け上がり、私は無我夢中で自分の家へと走った。

家の門を開けて、私は玄関に飛び込んだ。

すぐに鍵を閉めて、自分の部屋に駆け上がり部屋の鍵を閉めた。

私は、ホッとした。

これであれは来ないだろうと…。

しかし、何かがおかしかった。

家に誰もいないことだ。

普通は、居間に母がいてびっくりした、と言わんばかりの形相で私を見る母がいない。

父は、まだ会社のはず…。

どこに行ったの?

心配と不安で自然と一粒の雫が私の頬をつたった。

そのとき、私の部屋をすり抜けてあれが入ってきた。

私の体は、震え、声はかすれて出すことができなかった。

追い詰められた、ここまでなのね…。

私は、頭が真っ白になった。

私は、気が遠くなりそうになった。

頭がぼんやりしてきて家族との思い出が次々と浮かんできた。

これが、走馬灯というものなのね。

でも、諦めるわけにはいかない。

なんとしてでもこれから逃げ延びなきゃ。

私は、立ち上がり窓を開けた。

ゆっくりと近づいてくる。

私は、一階の屋根に降りた。

そこから下は約5m近くある。

私は、意を決して下に飛び降りた。

足に、地面にぶつかる衝撃が走る。

激痛が体にほとばしった。

しかし、私は走る。

走る、走る、走る。

呼吸ができなくなる。

それでも走る。

誰もいないこの町を…。

体が言うことを聞いてくれなくなってきた。

足が悲鳴をあげてきた。

それでも走る。

あれから逃げるために…。

一体あれは何なのだろう。

いつしか私はそんなことを考えていた。

後ろで声がした。

もう逃がさないよ。

顔が引きつった。

後ろを振り向くと目の前にはあれがいた。

大きな一つの物体。

「ヒッ!」

私は、後ろに走ろうとした。

しかし、それは、七つに分身し私を取り囲みじりじりと迫ってきた。

「嫌っ、嫌っ、来ないで、いや~!」

私は、目が覚めた。

自分の部屋のベッドの上で…。

夢?

私は、そう思ったのだが体が震えている。

一階に降りると母は何事もなかったかのように私に挨拶をしてきた。

私は、朝食をとり、学校へと向かう。

いつも通りの平凡な日常を今私は過ごそうとしている。

あの悪夢がまだ頭の隅にこびりついている。

思い出したくない。

私は、あの悪夢を思い出しそうになったので首を振り悪夢を払いのけた。

教室に入り席に着く。

あの悪夢がうそだったかのように和やかな雰囲気が教室を漂っている。

一時間目は、…私が嫌いな国語じゃないの!

悪夢が再び掘り起こされた。

まぁ寝れるしいっか。

私は、心を落ち着かせた。

チャイムが鳴り教師が入ってきた。

そして、紙の束が列ごとに配られる。

紙には…。

後期末テスト 国語

何?

これ?

テスト?

ですって?

私は、立ち上がって先生に聞いた。

「先生、これは?」

「これは?って今日から一週間テスト週間だろ?

まさか勉強してこなかったのか?」

「…。」

そうか、私が夢で見た黒い物体はテストの科目の不安だったんだわ!

私は、頭が真っ白になりテストどころではなかった。

その次の日も、その次の日も私は同じ夢を見た。

よって、テストも手につかず私のテストの成績は言うまでもない結果になってしまった。

もちろん、追試が決定し、私の生活はどん底に叩き落されてしまったのであった。

                                    (完)

初投稿です。

どんどんうまくなっていくようにがんばります。

皆様、応援宜しくお願いします。

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