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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

卵の殻を破る

作者: 倉木英知


 《卵》卵細胞そのもの。動物の雌の未受精の卵細胞。又は胚発生『(はいはっせい)多細胞生物が受精卵から成体に至るまでの過程。単位発生『(たんいはっせい)卵子が精子と受精することなく、新個体が発生し成体に至るまでの過程。が進行した状態で、体外(外環境)へと産み出される雌性の生殖細胞と付属物の総称。


 その多くは内部と周辺環境を隔てる構造で、幾らかの恒常性(こうじょうせ)つまりは『生物、鉱物に於いて、内部環境を一定の状態に保ち続けようとする性質』を保つ機能があるのだそうだ。


 だから卵と云うモノは家族に似ているのだと思っていた。内部環境つまりは【家族の幸福】を保ち続けようとするモノなのだと…。しかしどうであろう…。その実、卵などではなく蛹の様なモノであった。内部環境は既に泥々としていたのだ。裏切り、疑心暗鬼、嫉妬。その様なモノが泥々とした液体として内部を満たしていたのであろう。


 だとしたのなら、その液体は何時(いつ)しか成虫の姿を構築するのであろうか…。内部で育ち、その殻を食い破るのであろうか…。


 ならば私はどの様な姿をしているのであろう。

シデムシと云う蟲が存在する。漢字では【死出虫】、【埋葬虫】と表記されるのだそうだ。その字が物語る通りに…。哺乳類等の動物の死骸があると出て来たり、動物の死肉を地中に埋めると云う習性を持ち、死肉食なのだと云う。動物の死体に群れ、その死肉を餌とする。そして、死体を土に埋め込む習性を持つ種類もいる。けれど死出蟲が持つ特殊な習性は、それだけではない。死出蟲は亜社会性の昆虫でもあるとの事だ。そう。死出蟲は大きな群れは創らず、人間の様に家族を形成する。


 誰かに云われた事がある。


【貴方は死出虫みたいだと…】

【貴方の傍に居ると死体になった気分になるわ。】 


 違うよ。違うんだ。


【私は、死出虫なんかじゃないよ。】

【死体があるから這い出てくるんじゃないんだ。】

【だって私は寄生虫だから。】


 死出虫は死体があるから這い出てくるのでしょ?

でも私の周りにある死体は私が養分を吸い尽くした成れの果て…。私が殺した死体なのだから…。


【貴方は純粋過ぎるのよ。まるで子供みたい。】


 そうだよ。私は大人に成れなかったんだ。


 幼虫の儘、生きている寄生虫なんだよ。


芽殖孤虫(がしょくこちゅう)】みたいなモノだ。


 だから私は…。

 貴方に寄生し、貴方の内部を食い破っていたんだよ。もうそろそろだ。おしまいにしよう。貴方も蛹の様に、中身が泥々としているのだから…。


 


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