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狂気 30

 全員がエルドの支援に集中しており、魔法陣の変化に最初は気づかなかった。が、その場にいる者全員が入り切れるほどの大きさになった時には、術師全員がその変化に気づいていた。


 「これはっ……!?」


 一人の者が声を上げて驚く。


 キュルキュルと魔法陣内部の図形も一部が変化し、エルドの回復していた魔力量はこれまで以上の量を消費し始めていく。


 最初に駆け付けたエルフの男は何が起こっているのか、すべてを理解する。


 「この陣の変化……まさか絶大レベルに術を格上げしているのか!!」


 エルドはそのより神経を研ぎ澄ませ、静かに唱え始める。


 『其れは光。されど希望はなく、地獄へ引きずり下ろす絶望の光である!』


 巨大になった魔法陣からズズズ、と新たな光が空に向かって伸び始める。だが、これまでのものよりも太く、厚く、強い光となっていた。


 「絶大魔術〈光縛〉!」


 詠唱終了と共に、生まれた光の触手は目にも止まらぬ速さで真っすぐ伸び、瞬時に龍の姿をした化け物にまとわりつき、捕縛しようとする。


 龍にしがみつき、攻撃していた冒険者は突然のことでどのように対応すれば良いのか、思考してしまうことで体が硬直してしまうが、三秒後には全員が巻き込まれないように咄嗟でそこから飛び降りていく。


 「ああァあアアぁァァあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 その光はどんどん絡みつく。その力は、動きを束縛していたレベルだったのが、まるで紙をくしゃくしゃにするかのように、またはミイラの包帯のように、体を覆って強く圧縮していた。


 「っ……ァッ…!」


 喉も光の触手で引き締められているからか、大きく口を開け、叫ぼうとしているが声は出ていない。しかし、音のないその叫び声の姿もまた恐ろしく、薄気味悪いものであった。


 この世のものではない。自然の摂理から生まれたものではないナニカ。


 「……とんでもないな」


 地上から化け物の姿を見上げる冒険者の一人がつぶやく。


 こんなにも死にかけているのに。こんなにも苦しそうなのに。恐怖しかないことに、この目の前にいる化け物の異常さに改めて驚かされていた。


 そして、これを見ていた者すべてが同じ気持ちであった。


 だが、皆の気持ち、考えを無視して問答無用に光は襲い掛かっている。


 ギチギチギチと、ドンドン力は強まっていく。それはとうとう肉体を破壊し始めたのか。触手の隙間から何かがこぼれ出始める。


 それは黒い液体。


 しだいにグチュグチュという音に変わっていき、化け物の体が肉塊に成っていっているのが分かる。


 「…ッ!……ッ!!……ッ!!!!」


 じたばたと暴れようにも、動かない。叫ぼうにも、叫べない。


 何も出来ない。


 そして、とうとう限界を迎える。


 ずちゃりッ!とすりつぶされた音が響き、まるで爆発したかのように肉塊となった龍の一部がはじけ飛び、大地を真っ黒に汚していく。

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