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狂気 29

 エルフの男は視線を魔法陣が展開されているエルドの足元の方へと向かう。


 「魔法陣を見るに、中級レベルの術だな。だが、これほどの効果のある拘束系の術を俺は知らん。オリジナルのものか?ベースとなっているのは下級レベルの〈マジック・バインド〉と〈パラリシス〉の二つか?それに光を実体化させるものを組み合わせて……実に簡素だが良い組み合わせだな。っと、術を確認している場合ではないな」


 男は意識を切り替え、エルドの肩を支えるように右手で触れる。そして、右手から魔力をエルドの身体へと流し込む。もう、枯渇しようとしていた魔力がどんどん増えていくのが感覚でエルドも理解する。


 「これぐらいしか手助けは出来ないが、楽にはなったろう?」


 エルフの男は、エルドの肩を右手で支え、そこから魔力をエルドに送っていたのだった。


 だが、エルドにはもう身体の感覚は無く、肩に触れられていることも自覚出来なかった。ただ、魔力が増えている事実から、彼が支援してくれているということだけが理解出来た。


 「あ…ありが……とう」


 「礼は後で良い。今は術維持に集中しておけ」


 本来であれば、エルドに術を中断させ、自分に入れ替えさせたほうが良い。


 彼の身体には負担がかかりすぎている。それに比べ、まだ五体満足で魔力量の多いエルフの男が術を発動させる方が良いに決まっている。


 だが、この術がオリジナルである以上、どのような術で、どれほどの魔力量を必要なのか。陣の書き順は?効果の詳細な内容は?その分析に数分は要する。エルド本人に聞きたいが、彼の今の状態を考えればそれが不可能に近いことは明らかだ。


 だからこそ、彼は自分の魔力を送るだけに徹底するのだ。


 だが、どんな形であっても支援はありがたいことだ。エルドは深呼吸を市、先ほどよりも安定して術の維持を始める。


 「やっぱり、ここにいたのね」


 そこに現れるもう一つの影。それは女性のものであった。


 ……いいや、一つじゃない。約十人ほどの術師。老若男女、種族さえ違う者たち。しかし、エルドの場所を見つけられるほどの術師が彼を助けるためにやってきたのだ。


 「私たちも支援するわよ!」


 そうして、どんどんエルドの中の魔力があふれていく。


 それは、彼の保有する魔力量を遥かに超えて。


 「では、ワシは回復魔術で脳の治療をしてやるとするかのう」


 一人の老魔術師が空中に小さな魔法陣を展開。そして、魔法陣に魔力を流し込むと、エルドの方へとその力は流れ出していく。


 術の効果で身体の色んなものが活性化されていく。異常な量の情報処理で破壊してしまっていた一部の細胞が、ありえない速度で分解され、新しい細胞へと置き換わっていく。


 汗で出てしまった水分に、血液量。その全てが安定し始める。


 身体の調子が戻り、魔力量も通常の数倍。


 脳の思考も冴えわたっていく。


 今の状態ならばもっと行ける。


 (より身体の負荷がかかるけど、行くぞ!)


 展開していた魔法陣がぐぐぐ、と変化していく。

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