狂気 27
先ほどは龍が自由飛行していたこともあって、斬りかかるのが精一杯であったが、今は光の触手によって捕縛されている。もちろん、その捕縛から逃れようと激しく暴れてはいるが、自由飛行している時よりもまだマシだ。
剣士は龍の巨体へと剣を突き刺すと、そのまま剣を強く握り締めてしがみつき、そこから安定している場所を目視で探してそこへと素早く駆けて登っていく。
遅れてやってきた槍士もまた、その槍を突き刺して剣士同様に龍へとしがみつき、安定した場所へと移動する。
最初、剣士が龍に攻撃しようとした際、身体中にあるいくつもの目がギョロリとこちらを見てきていたが、今はこの光の触手から逃れることに必死のようだ。ケタケタと嗤っていた口も、今は食いしばっている。
「さて、ここからどうする!?」
この激しく暴れている龍の上で体のバランスを取りながら、槍を構えて剣士に尋ねる槍士。
このまま攻撃してもあまり意味はないことが理解していた。というのも、最初に剣士が攻撃した時、すぐにダメージを与えた箇所が回復していたからだ。
「おっと、俺たちと同じこと考えている奴がいたみたいだな?」
二人のようにこちらに飛んでくる一つの影。彼もまた、二人のように剣を突き刺し、しがみつく。
全身を鎧で守っている男。鎧には中級レベルの魔術が付与されており、重そうな恰好でありながらも身軽に動くその姿。それはこの国の兵士の姿であった。
「お前ら、冒険者か?」
「そういうお前は兵士か?」
兵士の質問に対し、さらに質問で返す槍士。
「ああ、そうだ。どうやら冒険者ギルドの方でも情報錯綜しているみたいだな」
「本来であればギルドに冒険者が集まっていくつかのパーティで連携を取るのが常識だが、この化け物が街で暴れたせいで、冒険者ギルドの建物そのものが崩壊。ギルドスタッフとも連絡が取れん!」
冒険者ギルドが今、どのような状況になっているのか、簡潔に剣士が説明する。
「それは運が悪かったな。兵士は今、ほとんどが住人の避難を優先していた。だが、今、誰の術なのかは分らんがこの光の触手で捕縛されてる今、討伐のチャンスだと思い、多くの兵士が討伐に動き始めている。気をつけろよ」
「アンタらの魔術師が発動させた術じゃないのか?」
これほどの捕縛の魔術。しかも、今もなお発動継続維持をしている以上、魔術師ではない者でもかなり優れた魔術であるのは分かる。
「そうだな。これは俺たちのやっていることじゃない。きっと冒険者の中の誰かだろうな。だが、捕縛してくれている以上、援助であるというのは確かだ。この機会を逃すわけにはいかないだろう!」
そう言って、兵士は龍に向かって斬りかかっていく。
兵士の方では冒険者たちよりも上手く動けているようだ。それが知れたことはとても大きい。だが、先ほどの『気をつけろよ』という発言がどういう意味なのか、二人は理解できなかった。が、質問する前に、その言葉の意味をすぐに体感することになる。
ドォン!と強く足元が揺れ、空気が震撼する。その振動元は龍の尻尾の方からであることは衝撃がやって来た方向から認識していた。そうして剣士と槍士の二人は尻尾の方を確認する。
すると、尻尾の方がまるで大砲の玉でもぶち抜かれたかのように抉られており、モクモクと煙が立ち込めていることから爆発したことが窺い知れる。
「兵士の魔術師連隊たちの魔術が飛んできたな?さてさて、えげつない治癒能力があるのはもうわかってるが、回復機能にも限界があるだろうし、回復速度も化け物並みだが対処不可能ってわけじゃない。このままどんどん行くとしますか!!」
そうして、兵士の言動に合わせて、剣士と槍士もすぐさま追撃を開始していく。




