狂気 23
トーゼツはその攻撃を見ていた。しかし、思うように身体が動かない。脳も上手く思考してくれない。まるで風邪を引いてしまった時のように、身体は重く、何も考えられない。
そうして何もすることなく、当然のようにローブの少年の刃を喰らって再び意識を失う。
しかし、ローブの少年は警戒を解かない。そのまま急いで後方へ下がり、距離を取り始める。
「さて、どうなる?」
しばらくして……。
ドクン!と鼓動が周囲に強く響く。そして―
「ッはァ!」
トーゼツの目が開く。
しかも、先ほどよりもかなり早い回復であった。
「最初は三十秒ほどだったが、今回は五秒も経たなかったな。能力発動のタイミングが分からないな。意識を完全に失ってから自動発動か?いいや、問題はそうじゃないな」
ここで一番重要なのは能力の内容だ。
トーゼツは生き返る能力を持っている。
その事実が大事で、とても興味深い点だ。
「俺は確実に魂を刈り取っている。生命は魂がなければ肉体と精神のつながりを維持できないはずだ。つまり、トーゼツ・サンキライの能力は概念世界へと到達しているということか!?」
だとしたら、トーゼツが神に愛される理由にも深くつながってくる。
「しかも死んだあとに発動している。自動発動ゆえに無意識、無自覚。それでいて概念世界へと片足突っ込んでるとはね!」
生き返るという点に意識が向いているため、彼は気づいていないが生き返る度にトーゼツの魔力量は確実に増えている。
前にも述べた通り、トーゼツの能力は『不屈の魂』、その詳細は『諦めない限り魂が散ることなく、肉体は死なない。また諦めない気持ちを魔力へと変換する』というものだ。
トーゼツはまだ諦めていない。
その魂は強く燃え、精神は屈強な力でその肉体を支えている。
「はぁ、はぁ!」
トーゼツは深く呼吸しながら、その多大なる魔力を纏わせ、立ち上がる。
目の前の障害を踏破するために。
「よォ、俺をこの程度で殺せると思っているのか?」
「ははッ、二度は殺してるんだけどなァ」
相変わらず彼は嗤っている。
楽しそうで、それでいて馬鹿にしているような嘲笑い。
「まだ笑うか?とことん、イカれてるな。その頭はもう治らねぇだろうな。俺がぶっ壊してやるよ」
トーゼツはクロスボウに魔力を送る。
弦は勝手に引かれ、矢が生成される。
「絶大弓術」
トーゼツは詠唱を開始する。
本来、『職』を持たないトーゼツは絶大レベルの術を使用することは不可能だ。それは魔力量や知識量が無いから、などではない。
脳のリソースが足りない。脳の情報処理が間に合わないと言ったものが原因で起こる。
しかし、今はなぜか、トーゼツはイケそうな気がしていた。
魔力も知識もある。
今は、脳さえ耐えてくれれば発動可能だ。
「これは…まずいなッ!」
ローブの少年は死神のような鎌を構え、彼も術を唱え始める。
(発動阻止したいが時間が無い!だが、先ほど一撃喰らって避けるのも不可能!受け止めれば確実に押し負ける!ならば、こちらも同等の威力の術で拮抗状態作るしかない!)
「固有技術!」
そうして鎌へと魔力を送り出す。




