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狂気 21

 その姿、様子を見てトーゼツは少しばかり恐怖を覚える。


 ローブの少年の体はボロボロ。まだ死にはしない負傷かもしれない。しかし、放っておけば出血多量で意識を失い死ぬだろう。そんな身体なのだ。


 なのに、それはひたすら嗤っていた。


 「ははははははははッ!」


 痛みは生きるモノとしての重要な本能だ。怪我は死へと直結しかねない問題だからだ。しかし、戦いが日常になっている者はその痛みに慣れてしまう者も少なくはない。


 それは苦しくないわけではない。単純に痛みという感覚に慣れすぎて脳が麻痺しているだけに過ぎない。しかし、目の前の少年は違う。


 それは決して苦しみの感情ではない。


 そして、その行動は生物のものではない。


 自然の摂理からかけ離れてしまっているナニカ。


 それにトーゼツは恐怖してしまっているのだ。


 「なん……なんだ、コイツ…」


 恐怖がトーゼツの心へと這い寄ってくる。追撃して倒す、なんて思考さえも思い浮かばないほどにトーゼツは得体のしれないナニカに緊張していた。


 「ははは、はは、はァ!良いねぇ、トーゼツ・サンキライ、最高の一撃だったよ!」


 彼の嗤い声は止まる。が、口角は裂けたように上がった不気味な顔は未だに嗤っていた。


 「しかし、少し残念だったのも事実だね。君は強い、が!まだまだ成長しきってない。それにアーティファクト頼りの戦闘スタイルだ。武器さえなければそこら辺の冒険者と何も変わらないかもな。ゆえに本当に神に愛された者なのか?と思ったけど、まだ成長過程なのかもな」


 そのセリフの半分以上を理解することがトーゼツには出来なかった。


 神に愛された?


 なわけがない。本当に愛されているのであれば『職』を授かっていないことが意味不明だ。


 成長過程?


 俺には才能がなかった。だから神々から見放された。


 「……何が言いたい?」


 「あぁ、何が言いたいか、ね。そうだね、戦ってみた感想になるけど、もう少しって感じかな?本当に刃の厄災討伐したのかって思うぐらいには弱かったね」


 トーゼツはその言葉に強く引っかかりを感じる。


 刃の厄災、討伐?


 なぜ、それを知っている?


 その事は今の時点でトーゼツ、アナーヒター、ミトラの三人しか知りえない情報だ。


 仮にミトラが何処かで話したとしても、まさか『職』の無い冒険者が刃の厄災討伐に一役買ったという話を信じる者がいるのだろうか?甚だ疑問である。


 と考えれば迷うことなく刃の厄災を討伐した者の一人と断言していることにかなり違和感を覚える。


 「なんで、知っている?」


 「さぁ、どうしてだろうねぇ。ははッ、アッ、アハッ!楽しかったけど、これ以上の成果はなさそうだし、そろそろ終わらせようか」


 彼の嗤いが完全に止まり、大鎌を構える。


 「期待以下だったし、成長しても期待出来るか分からない。つまりはここでさようなら、だッ!」


 それは一瞬の動きだった。


 一秒も経たずに距離は詰められ、鎌を下から上へと大きく斬り上げる。


 クロスボウに魔力を纏わせ、受け止めようとする。が、受け止められる前にトーゼツの肉体へと到達してトーゼツを貫いていく。

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