狂気 19
アナーヒターとイルゼの最後の激突が始まろうとしていた少し前、トーゼツの方では……。
「おらッ、おらおらおらッ!」
ローブの少年は勢いよく鎌を回転させ、何度もトーゼツに向けて斬りかかっていく。
こんなに大振りになると、壁や地面にぶつかりそうなものだ。だが、その刃が何かにぶつかろうとするその瞬間に、鎌はまるで幽霊のように存在が薄くなる。そして、通り過ぎるとまた実体を持ち、トーゼツへとその刃の先を向けるのであった。
どんどん回転が速くなり、威力も上がっていくその鎌を軽やかな動きで躱し、また剣で力の方向を少し逸らすことによって対応していた。
しかし、確実に焦りがそこにはあった。
(まだ大丈夫だが、どんどん回転するごとに速度が上がってやがる。遠心力がよりかかって、真正面から受け止めきれないほどにはパワーもある。だが、問題は反撃の隙がないことだ!)
カァン!カン、カン!と剣で少しでもその回転を抑えようとぶつける。しかし、火花が散り、その振動は剣を通して腕に伝わるだけ。その回転が鈍くなることはなかった。
「はははははははッ!こんなもんじゃねぇだろォ、神に愛された男がァ!」
それは、一瞬だった。
「ッ!?」
気づけばトーゼツは吹っ飛ばされ、口から血を吐き出していた。
どうやら、大鎌の方に意識が向きすぎていたようだ。ローブの少年の蹴りが上手く腹に直撃してしまい、その結果、そのまま後方数十メートルへ吹っ飛んだ。ということのようだ。
口の中に鉄の味が広がる。
あったかく、赤い自分の体液が服に付き、気分も悪くなる。しかも、あったかかった体液が冷たい外気によってすぐに冷たくなる。
しかし、トーゼツは冷静に思考をしていた。
(油断していたな……。しかし、あの鎌、全ての物体を貫通出来るわけじゃないようだな)
壁や地面を通るときは、存在を希釈させ、まるで実体のない幽霊のように貫通していた。そして、その希釈した状態と実体化した状態のオン、オフは自由自在に切り替えれるようだ。
だが、ここで疑問となるのが一つ。それは、トーゼツの剣は貫通せずにぶつかっていたことだ。
(この違いがあるとしたら、考えられるのは一つだけだな)
だが、確定したわけじゃない。
ここはもう少し趣向を変えて戦うとしてみよう。
(近距離戦じゃあ不利だし、コイツを使うか……)
指輪に魔力を込め、空間に出来た穴に剣を放り投げる。そして、新たに取り出した武器は―
「クロスボウ?」
取り出したクロスボウを構え、魔力を込める。すると、弦が勝手に動き出し強く引かれる。そして、魔力で具現化された矢が生成される。
(魔力の具現化によって武具や物の生成は簡単だが、使用する魔力量は増大になる。だが、あの矢の生成にはかなり少量だったな。そういう効果を持つ魔具ってことか!?)
しかも、トーゼツの使用する武器を見た感じ、全てが神代の魔具であった。きっとこのクロスボウも神代時代の遺物と見て良いだろう。




