狂気 11
その一撃が来る前に、アナーヒターは一瞬で壁型のバリアを展開してアナーヒターは身を守る。が―
「なッ!」
彼女の展開したものは上級魔術の防御系魔術であった。破壊するには上級レベルの技か、それに値するほどの威力を持った攻撃。
それに対し、イルゼは拳に魔力を纏えわせたもの。
ある程度の威力はあるだろう。しかし、止めきれるはずだ。そう思っていた。
にも拘わらず、その拳は魔力を身に纏っているだけの状態で簡単に破壊する。
「この程度で私の拳を止められるとでも?」
しかも、威力はまるっきり落ちていない。
避けることも、身を守ることも、出来ない。時間が足りない。
少しでもダメージ軽減を狙って、杖を前に出す。
「おっらァァァァァ!!!!」
彼女の拳は杖に当たり、その衝撃が杖を通して体に襲い掛かる。
「くぅッ!!!!」
痛い。
ありえないほどの衝撃。
そう思えるほどの威力であった。
しかし、問題はそこから先に起こった事であった。
「ァ!?」
びりびり!と電気でも奔ったかのような衝撃が体に駆け巡る。
いいや、それは痛みだ。
先ほどの痛みが、まるで乱反射する光のように体の中でも何度も、何度もぶつかり、駆け巡っている。
痛みで思考が定まらない。
指先すらも、動かない。
「まだ、まだぁ!!」
すでに、イルゼの攻撃を受けて五秒以上が経っていた。彼女がもう一度、拳をふるうには十分すぎるほどの時間が経ってしまっていたのだ。
(ま、まずい……!)
ようやく痺れが落ち始める。
だが、まだ思うように体が動かない。
「もう一発、喰らえぇぇい!!」
ボンッ!と顔面にもろにその右拳は入る。
さっきは多少、本当に僅かでないよりもマシと言うのがふさわしいほどのレベルだったが、それでも杖がクッションになってくれた。しかし、今回はそのクッションさえ無い。
その威力はすさまじく、一気に頭が地面に叩きつけられる。そのまま地面をバウンドしながら数百メートルほど吹っ飛ばされ、空中で体は反転し、建物の壁に勢いよくぶつかる。しかし、建物の壁すらもその衝撃には堪え切れず、簡単に壊れ、アナーヒターは瓦礫の中に埋め込まれてしまう。
「ははッ!良い飛びっぷりだなァ!!」
それは、ホームランでも打った野球選手化のようなセリフと喜びであった。
「しっかし、普通の人間は一撃でも喰らえば痛みで苦しんで動けなくなって、そこを一方的に叩いて終わるんだけどねぇ。やっぱ術聖、ほかの戦士職とは違うってわけか?まったく、こんなに戦いで楽しくなりそうなのは仲間内で殺し合う時以外を除いて初めてだよ!!」
まさに、戦闘狂。
この夜の中、彼女の不気味なほどに狂気にまみれた笑いはとても恐怖に満ちたものであった。
「ちッ!痛ってぇな」
ガラガラ、とアナーヒターは瓦礫を退かしながらも、杖で体を支えながらゆっくりと立ち上がる。




