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狂気 8

 イルゼとアナーヒターがぶつかり始めたその時、未だにトーゼツは動かずに、ローブの男がどのように出るのか?指輪に魔力を込め、いつでも武器を出せるように準備しながらも様子見をしていた。


 それに対し、ローブの男は全く戦う意思が感じられなかった。


 まだ何か……余韻に浸っているように感じる雰囲気であった。


 静かに、しかし緊張したその場にはイルゼとアナーヒターの戦っている音が響く。


 「ククッ、イルゼと術聖アナーヒターはもうり始めたみたいだな。ったく、俺はようやくトーゼツに会えた余韻にまだ浸っていたんだが……まぁ、良いか。俺たちもさっさと始めるか!」


 男は魔力を練り上げると、右手に生成した魔力を集中し始める。


 「固有技能具現化〈サイズ・オブ・デス〉!」


 そのように唱えた瞬間、右手の魔力はうねり始め、形を作っていく。そして、それは次第に死神の鎌のようなものへと変貌し、現実のものへと具現化されていく。


 「死神の鎌!?」


 そうか、コイツなのか!


 俺を狙い、あの村を皆殺しにした犯人は……!


 そうと分かれば、迷いはない。


 目の前の大罪人に葬るだけだ。


 すぐさまトーゼツは指輪の力を使って、空間に穴を開け、そこから一本の槍を取り出す。それは、持ち手の柄頭に雄牛のデザインが施されていた。


 すぐさまローブの男は察知する。その槍の異様な雰囲気に。


 (槍に魔力を纏わせている……わけじゃないな?)


 見ているだけじゃわからない。ここは一度、ぶつかり、直接感じた方が良い。


 くるり、と巨大な死神のような鎌を回す。そこから素早くトーゼツへ接近し、回している遠心力を利用することで威力を底上げしながら力強く振り下ろす。


 それをトーゼツは紙一重で躱す。


 この勢いであれば、鎌は部屋の床に突き刺さるはずだ。であれば、刃を床から引き抜く。または床を破壊する……とにかくすぐには追撃出来ないうえに、こちらが攻撃するチャンスがあるはずだ。


 トーゼツは槍を力強く握りしめ、すぐに反撃できるように意識する。


 しかし―


 「ッ!!?」


 その刃は、床を貫通する。それは、物理的にではなかった。この現象はなんと説明すれば良いのか。


 言うなれば、幽霊のようなとでも言うべきか。鎌はまるで実体のない幽霊のような感じで床をすり抜け、貫通していく。


 「驚いたかァ?」


 鎌はそのまま一周し、遠心力がさらにかかった強い二撃目を今度は右から左へと横に薙ぎ払うように問答無用でローブの男は放つ。


 予測していなかった動きに、今度は避ける余裕はない。


 (槍を使って真正面から防ぐしかない!)


 しかし、床を貫通するのを先ほど見たばっかりだ。もし、槍が貫通し、トーゼツの肉体だけを斬るものであれば……。


 だが、そんなものを考える暇もない。


 刃の動きを目で追い、槍を構え、防ごうとする。


 遠心力も重なり、ものすごい速さだ。だが、捉えきれないほどではない。


 (頼む!!)


 そうして、槍と鎌はぶつかり、カァン!と強い鉄の音と明るく火花が散る。

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