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狂気

 トーゼツ達が眠りについた同時刻。


 そこは、あの村を襲った者が言っていた場所。ハルドの首都、レーデル。


 ハルドがそもそも小規模の国家であるものの、やはり国の中心地だからなのであろう。レーデルは道もしっかり整備され、並び立つ建物は高く聳え立っている。


 しかし、前までトーゼツ達がいたセイヘンの都市に比べればレーデルはとても小さかった。この街で最も高い時計塔から見下ろせば、すぐそこに木々が生えた美しい自然の森が広がっているのが分かる。


 人口も一万人を超えた程度のものだろう。


 だが、前にも説明した通り、商人や旅人などがセイヘンをはじめとした北方諸国へと向かうには絶対に通らなければいけない国である。また逆の北方諸国の者が南方諸国へと行くためにはここを通る。


 つまり、住んでいる人口は少ないが、一時的に滞在している者。商売をしに来た者。それらを含めれば、実際には二倍、三倍ほどにはもっと人がいると思っても良い。


 そんな街で、最も高い時計塔からこの広がる都市を眺める一つの影。


 それは、大きな死神のような鎌を持っていた。


 「夜でも街は明るいな。やはり、小規模国家の小さな首都とはいえ、経済はかなり潤っていると見て良いな。だからこそ、道路の舗装に大都市に負けないほどの建築物……公共のものにかなり力を入れることが出来ているというわけだ」


 もちろん、それ以外の要因も考えられるだろう。


 例えば、ハルドは王権国家ではないという点だ。


 五年に一度、行われる投票で国の代表者を決める共和制国家である。そのため、国民の意見がとても繁栄されやすい国なのだ。そういえばとても聞こえが良いが、これは国民のほとんどが学を身に着けていなければ上手くいかない話である。


 頭の悪い国民が多ければ、頭の悪い意見が国に反映される。頭が良い国民が多いからこそ、とても良い意見が反映されていく。


 ハルドも昔は王権国家だった。だが、その王が国民への教育へと力を注いでいたからこそ、今のハルドが存在しているといえる。ちなみに王家は百年以上も昔に途絶えてしまっている。そのため、最初は共和制ではなく立憲君主制であった。


 「だがそんなもの、もう関係ないな」


 ハハッ、と彼から嗤いがこぼれる。


 「数日後には人も、物も、金も意味ない血の世界になる。平和で小さな街もあと数日すれば恐ろしく、とてつもない地獄と呼ばれるだろう!ハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」


 くるくる、と死神を彷彿とさせる鎌を回しながら彼は嗤い続ける。その姿はまるで歌いながら舞踊でもしているかのような、楽しさと狂気にあふれていた。

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