先行き不明 3
ダイモンは神を人工的に作り出すために生まれた存在。
その製造方法、過程はそれぞれ異なっている。だが、どれもダイモンと成れた存在は全員が神に届かずとも、人を超えた力を持っている。
それを可能にしているのは、人並み以上の莫大な魔力量。
メイガス・ユニオンが人工的に神を生み出す上で重要視していたのが、あの莫大なエネルギーだ。
神々は人の想いから生まれた。故に神の扱うエネルギーは魔力ではない。想う力によって天変地異を可能にしていた。
だが、結局やっていることは魔術と変わらない。魔術は魔力を別のエネルギー……熱や電気、光エネルギーに変換している。神々も想いの力を別のエネルギーに変換して術を発動してきた。技術や知識の差はもちろん、あるのだろう。しかし、人が神に昇華する上で必要なモノは人以上のエネルギーだ。
では、その足りないエネルギーを行うためにはどうするべきなのか。
魔力は魂から生成される。しかし、人間の魂は基本、肉体に一つしか宿らない。
だが、二つ以上の魔力を持つことが出来ればどうだろうか?
複数の魂を保有し、そこから問答無用に魔力を生成することが出来れば、神に等しいレベルのエネルギーを生み出すことが容易になるのではないか?
……ここまで言えば想像つくかもしれない。
ダイモン、その正体は他者の魂を取り込み、人並み以上の魔力を持つ者たちのことなのだ。
だが、実験の多くは魂を取り込ませた時点で、その莫大な魔力量に耐えきれず肉体が自壊してしまったり、精神に影響を来たしてしまった。さらに、魂を抜き取られた者も、既に死んでしまっている。この実験で数百人の命が使われてきた。
ローリィやラツィエル、ハニエルは複数の魂に適応した特別な存在だったのだ。
しかし、この実験に適応した者たちも正確に言えば、成功とは言えない。なにせ、人の領域を超えた程度であり、神へと到達は出来ていないのだから。
一体、どれほどの人間が魂を取り込まれ、死んでいったのか。こんな残酷な実験の末、生まれたモノに対し、アナーヒターやミトラが侮蔑の目を向けるのも無理はない。
「ふむ、『どれほど残酷なものか』ですか……。確かに多くの命を無駄にした実験でした」
「だったら──」
次のラツィエルのは発言にアナーヒターは強い衝撃が奔る。また、ミトラもこの国の深く根にある大きな問題、闇を感じ取るのであった。
「実験に使われたのは人やドワーフですよ、アナタはハエやアリの命に気を使うんですか?」
エルフ至上主義。それはエルフ以外の種族を下等と見なし、エルフ族だけがこの世界に選ばれた唯一無二の種族とする思想。セレシアを中心にその思想は広がっており、それは一部の国において、政治にも反映されているという。
ミトラも、もちろんこの事は知っていた。だが、これまで会ってきたエルフの中で……アナーヒターやロームフ、チャミュエルなどはこの思想に強い影響を受けていなかった。故に、ラツィエルの発言はミトラの思考を停止させてしまう。




