先行き不明
術聖アナーヒターと剣聖ミトラは城の内部を探索していた。
城の内部には多くのメイガス・ユニオンの兵士がいる。が、未だにアナトの魔術によって重力を奪われ、ほとんどの者が天井に張り付いている。
「お前ら、タダで済むと思うな……!」
「くそ……誰か早く術式の解析を──」
何も出来ずに、ひたすら天井でジタバタしている兵士たちの呻き声に一切、興味を示すことなく二人は廊下を進んでいく。
「アナトのおかげでラクチンだな」
アナーヒターはそのように呟く。
実際、城の中に入ってから二人は一切、戦闘する事はなく、ゆっくり落ち着いて探索する事が出来ていた。さらにアナ―ヒターが元々、メイガス・ユニオンの魔術師。ある程度、城の構造が変わっている点もあるが基本の部分は頭に入っている。
迷うことなく真っすぐ進むアナーヒターに、ミトラはただひたすらついていく。
「今は何処に向かってるんですか?もしかして、シャルチフの居場所を知っているとか?」
ミトラはそのように質問する。
「そうだな、ある程度、検討はついている。が、会長だって馬鹿じゃない。もしかしたら私でも知らない所へ避難しているかもしれない。この私の検討だって頼りになるものじゃないさ」
「それじゃあ、何処へ?」
「魔具管理室。メイガス・ユニオンの魔術師たちが魔術研究の果てに生み出したあらゆる兵器、魔具が保管されてある。中には神代の遺物を超えるモノや、奥底には発掘された神々の武具もある」
そこまで聞いてミトラは、ハッとする。
「そうだ、調和神アフラの保管庫から盗まれた神代の遺物の回収だ。一体何が盗まれたのか、知らない。が、その姿、形は聞かされている。盗まれたモノは合計三つ。一つ、赤と青、二組の布。二つ、手に収まるサイズの小さな木箱。三つ、端と端が結ばれ、一本の輪になった縄。これを見つけ出して取り返す。これらを盗んだのには必ず目的があったからだ。今のうちにさっさと奪還するぞ」
その説明を聞いていて、ミトラは何か引っ掛かりのようなモノを感じていた。自分の中で点と点が線に繋がりそうで、しかし何も分からない考えが頭の中で巡る。
メイガス・ユニオンの真の目的は神に到達することだ。それを過去の潜入作戦で彼女は知った。ダイモンを生み出した実験というのは、きっとエルフに神の力を与える実験だったのだろう。故に彼らは人を超えた力、異能を保有している。
では、そんな彼らが調和神アフラの保管庫へ危険を犯してまで欲しかった神代の遺物とは何だったのだろうか?
メイガス・ユニオンもいくつかの神代の遺物を収集しているという情報は、アナーヒターから聞いている。それにダイモンが個人で保有しているのも確認されていた。しかし、彼らは自分たちの持つ神代の遺物ではなく、調和真アフラの持つモノを選んだ。
そこに何か、それでないといけない理由があったのだろうか?




