崩壊 5
「……ゥ…ん」
男は目を覚ます。
そこは見慣れない部屋。大きな暖炉があり、暖炉を囲むように椅子が三つ置いてある。自分はそのうちの一つに縛り付けられていた。
まだ意識がはっきりしない。前後の記憶も、曖昧だ。
そんな自分の事さえも思い出せない、おぼつかない中で周囲を見渡す。
テーブルであったり、小物を入れるような木製の箪笥がある。だが、見覚えのない家具。やはり、ここは自分の知らない家だ。
縛られながらも頑張って自分の首が回し、なんとかこの場所が何処なのか、突き止めようとする。
窓はあるが、何も見えない。決して窓が木の板であったり、何かによって塞がれているわけではない。ただ、今は夜で外の風景が暗くて見えないだけである。
「おっ?ようやくお目覚めのようだな」
そこに、むしゃむしゃと何かを食べながら自分に近づいてくる者がいた。
ちょうど自分の真後ろということもあり、首をどれだけ回そうとも、見えなかった。ただ、声と影からして自分よりも年下の男……十七あたりの少年というところか。
「あ、アンタ…何者だ!?俺を縛ってどうしようと言うんだ!!」
「あぁ?なんだ、思考はどうやらまともだな。だったら、精神錯乱系の魔術を喰らったわけじゃなく、ただ本当に混乱していただけか?」
「何の話だ!?」
その少年らしき影は、ずっと視界に映らないように後ろにいた。それが意図してなのか。それとも何も考えずに、真後ろに立ち続けているのか。
「まぁまぁ、危害を加えるつもりはない。落ち着け、と言われても無茶だよな」
そうして、その少年はようやく男の前へと現れる。
「とりあえず自己紹介だ、俺の名前はトーゼツ・サンキライ。この村を訪れた冒険者だ。アンタは?」
「はっ!?……あっ、え……っと?」
突然の自己紹介でようやく回復しかけた意識がまたもや真っ白になる。
「俺の……俺は?あー、村の狩人、ウッデルだ」
「ウッデルさん、ね。覚えたぜ。アンタ、記憶はハッキリしてるか?この村で何が起こったのか?全部覚えているか?」
そう言われて、ウッデルは記憶を探る。
……そうだ…そうだ、そうだ!!!!!
「うっ」
彼は、抑えようとする。
だが、不可能だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああ!!!!!!!」
思い出す。
あの恐怖を。
とめどなく心に押し寄せてくる、畏怖を止められない。
「あああ!!ああっ、あ、あああああああ!!!!!」
縛っているロープが千切れるかもしれないほどの体の震え。一緒に縛っている椅子も、彼の震えに合わせてガタガタと踊っている。また、足も子供のようにジタバタさせている。
「おわァ、あァ、あああ!!!!!!」
「お、落ち着け!!!」
トーゼツは新たに何本かのロープで縛り直し、動かないように固定する。




