真の課題 11
ローリィに強い敗北感が襲い掛かると同時に、強い歓喜があった。
この戦いで自分の何処が悪かったのか。
魔力量が足りない?知識がなかったのか?立ち回りか?自分は一体、どうすれば勝てたのか。自分に足りていないモノは、成長の余地のある部分は何処だったのか。
あぁ、久しく忘れていた。
これが成長するということか。
また、アナトもかなり満足している様子だった。
「さすがだった。エルフ最強と言うのは伊達じゃなかった」
そこに嘘偽りはなかった。心から出た言葉。だからこそ、ローリィも心の底から喜ぶ。
「アナタにそのように言われるのは、とても光栄ですね」
アナトはローリィの首元へ槍先を近づける。
「とりあえず殺しておくが、安心しろ。うちの術聖には二日、三日程度の死に立てであれば、どんな状態でも蘇らせるヤバイ奴がいる。安心して死んでおけ」
そうしてローリィに死が訪れようとしていたその時──
「ッ!!」
突如、アナトが槍を持っていた右手に強い痛みが襲い掛かり、槍が地面に落ちる。
何が起こったのか。
ゆっくりと、アナトは自分の右手を見る。
……右手が半分、抉れて無くなっていた。
小指、薬指が欠け、三本の指しかない。
「さすがは人類最強。ローリィすらやれるとは、な」
そこに現れるのは、この戦争の最重要人であり、メイガス・ユニオンの会長。
「……ようやく現れたか、シャルチフ会長!」
「さすがのローリィが破られれば、儂が出なければならないだろう」
「老いぼれがが出てきた所でどうするってんだよ。アンタはチャミュエル・ローリィより弱い。それはダイモンを生み出したアンタだからこそ、より強く自覚しているはず。それとも、ローリィとの戦闘で魔力に体力を消費した私になら勝てるって思ったの?」
アナトの魔力は確かに少なくなっているのかもしれない。しかし、そもそもアナトの持つ魔力量は絶大な量だ。言うなればアナトの魔力量は魔術師十人分以上の魔力量を持つ。ローリィとの戦闘にはかなり魔力量を消費したが、それでも二人分の魔力しか消費していない。
体力だって一切、問題はない。ちょっとした髪は焼けちゃったかもしれない。汗かいて水分も減っていることだろう。しかし、傷はついていないうえ、息すら上がっていない。
シャルチフ会長との戦闘に支障など全くない。
「一体、どうやって私と戦うっていうんだ?」
実力では絶対に叶わない。だが、シャルチフ会長が馬鹿ではないのは確かだ。であれば、アナトを倒せる手段があるのか?もしくは、何かしらの兵器を使うのか?魔具か?神代の遺物か?一体、何を用いてアナトと戦うというのか。
「忘れてしまったのか?」
その時だ。
急にアナトに酷い頭痛が襲い掛かる。
持っていた杖と槍を地面に捨て、両手で頭を押さえる。
一体、何が起こっているのか、アナトには分からなかった。痛みで思考することすら難しかった。




