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真の課題 10

 アナトが液状の生物を相手しているその間にもローリィはアナトの目の前へと接近していた。


 この距離であれば……いける!


 そう判断したローリィは持っていた瓶を落とす。パリンッ!という音と共に中に入っていた気体が周囲へ漂い始める。その瞬間、溶岩などとは比べ物にならない熱量が発生する。この戦いの中、何度もローリィが行ってきた核融合だ。青白い光を放射しながらその熱量は広がっていく。


 アナトに襲いかかってきていた液状の生物すら跡形もなく吹き飛ばしながら、それは彼女へ襲いかかる。魔術を展開する時間などはない。すぐさま使っている槍、エクシランケの能力を用いて熱量を抑え込み、はじいていく。


 しかし、その力はエクシランケの能力すら突破しようとしている。


 (槍の想定出力を超えてきたッ!)


 それでもあと数秒は持つだろう。


 そのうちに魔法陣を展開し、詠唱をしようとする。のだが──


 「ッ!」


 バチバチッ!という音と共に強い光がアナトに向かっていく。それはギリギリの所で耐えていたエクシランケの能力を完全突破してしまう。


 「知ってましたか?核融合では粒子が電気を帯びる、プラズマを発生させることを……!」


 アナトはこれまで感じたことの無い熱量が襲い掛かる。強く皮膚を焦がし、バチバチィ!と雷が体全身に駆け巡っていく。


 ローリィはそこへ追撃に更にプラズマを生み出し、雷鳴を轟かせながらアナトへ放出する。


 だが、まだ。


 これでは足りない。


 確実にアナトを追い詰めるのには……!


 握りしめていた剣、ソーンツェメッチに力を込め、詠唱を行う。


 「神術〈スヴァローグ・プラーミャ〉!!!」


 まさに絶対絶望だ。


 本来であれば──



 (……ッ!この迫り来る感覚!)


 何年ぶりだろうか。


 自分が死を感じるのは──


 「やっぱり最高だよッ、チャミュエル・ローリィ!!」


 アナトは嗤っていた。


 紅く燃える業火の中で。


 そして次の瞬間、ローリィは驚いていた。


 何せ、気づけば彼女は地面に倒れていたのだから。


 「ァッ!!」


 地面に強く背中を打ち付けられ、肺の中の空気が一瞬で吐き出される。体の節々が痛い。関節が上手く動かない。治癒して止血していた傷が再び開き、口から血がごぽぎぽと零れだす。


 (何が……起こって……!?)


 いいや、なんとなく予想はつく。


 目の前に立っているアナトの右手には槍。そして左手には先ほどまでは持っていなかった杖があった。そして、彼女の足元に展開されている魔法陣。陣の内部に描かれた数式、図形からしてそれは風を生み出す魔術、しかも絶大級であるというのが読み取れる。


 きっと、一瞬にしてアナトの魔術で炎も、ローリィも、この勝負の勝敗すらも吹っ飛ばしてしまったのだろう。そして、ローリィは負けてしまったということである。

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