真の課題 8
アナトはローリィが自分の一撃を耐え抜いた、その事に驚いていたが、それよりも予想外だったのは──
「ちィッ、マジか!?」
ローリィの固有魔術〈アラン・ヒルズ〉もまた〈デフィキエレ・コンフォデレ〉を超えてアナトへと到達していた。いくつかの隕石のように彼女に向かって強い熱を持って強く降り注ぐ。
周囲にバリアを展開し、その攻撃から身を守ろうとする。防御魔術を展開する時間はない。それはただ、魔力を膜のように展開した簡易型のドーム型バリアであった。
初撃、二撃目は簡単に耐える。だが、次から次に落ちてくる隕石はバリアにヒビを入れ、壊そうとしていくる。その度に魔力を更に流し込み、バリアの補強を行う。
(少し怖かったが、なんとか耐えれ──)
その時だった。
バリアの外……降ってきた燃える隕石の中から何かが這い出てくる。それは赤いナニカ。最初見た時は炎によって溶けた大地、溶岩であると思っていた。だが、明らかに挙動が違う。その赤いスライムのような流動体は意思を持って這って来る。
(ローリィの能力!?操作しているのか、いいや、違う。明らかにこの数を同時に操作するのは難しい。自動……それも違うな。なんだ!?)
一つ一つから魔力が湧き出ている。魔力は魂から生成されるエネルギーだ。そして現代の魔力学では魂を持つ者は生命しかありえない。ということは──
この流動体のナニカは生きている、生命であるということだ。
これが何を示しているのか。
ローリィは魔術で自然界にない、何処の系統にも所属しない原初の生命を生み出すことが出来るということである。これは神代の神々でも行うことの出来なかった事である。
これがダイモンの力なのか……。
そして溶岩のように巨大な熱量と、微小の魔力を備えたその生命たちはまるでゾンビのようにアナトのバリアに群がっていく。どんどん押し寄せてくるその物量にバリアがどんどん耐えきれなくなり、パキパキと悲鳴が上がっていく。
槍で一気に振り払うか。いいや、この生命体がどのような存在なのか、不明瞭である以上、少しでも触れるような状況になるのは危険だ。
となれな……仕方無い。魔術を使うしかないだろう。彼女はバリアの中で魔法陣を展開し、詠唱する。
「絶大魔術〈フォルティス・ウェントゥス〉!」
その瞬間、アナトを中心に強い風が生まれ、熱は掻き消され、流動体の生命体全てが千切れて吹っ飛んでいく。しかし、あの生命体はプラナリアのように細胞分化が出来るのだろうか。千切れて小さくなってもなお、何事も無かったかのように動いている。
それでも、バリアに群がっていた奴を引き剥がすことには成功した。さらには魔術で簡単に吹っ飛ばすことも出来た。殺すことは出来なかったが、そこまで脅威ではないというがある程度、把握出来た。
アナトは落ち着いてバリアを解除し、状況を確認する。




