真の課題 7
アナトはふぅ、と深呼吸しながら次の一手を探る。
(杖も出して、術聖、槍聖の二つの力で押し通すか?いいや、それでも倒せるかどうか……。ローリィを倒しても、まだまだダイモンはいる。他の相手をする可能性がある以上、本気を出さず、いくつか手を隠しておきたい。ペースは私が握っている。このまま押していく!)
ローリィは焦りを覚える中、それでも冷静に、そして覚悟を決める。
(まだ本気を出しませんか……まぁ、私も彼女と同じ立場であれば、そうしますが。しかし、腹を括って本気を出す可能性が捨てきれない以上、なんとしても、今の内にやらなければ!次の一手で最高火力と共に、奥の手を使うとしましょう!!)
お互い、攻略方法を決めた。あとは自分が勝つために本気を出し尽くすだけ。
空気がヒリつくように感じるのはローリィの放つ熱が原因だろうか、それとも──
二人は時間が止まってしまったかのように動きを止めている。互いに観察し、強く警戒している。瓦礫の落ちる音だけが周囲に響く。
………………。
「ッ!!」
先に動いたのはアナトであった。
彼女は魔法陣を目の前に展開、それと同時に詠唱を開始する。
「〈この一撃は全てを破壊する一撃!何人たりすら耐えることは叶わん!!〉」
槍を構え、魔法陣に向かって大きく突く構えを取る。
その動きにカウンターを入れるように、ローリィもまた動き始める。彼女もまた周囲にいくつもの魔法陣が展開する。だが、これでは足りない。神術〈スヴァローグ・プラーミャ〉を無詠唱、無魔法陣で並行発動させながら、彼女は詠唱を開始する。
「〈我は破壊を司る者!軍勢を率いて、主の力を象徴する者なり!!〉」
そして、二人の力はぶつかる。
「絶大槍術〈デフィキエレ・コンフォデレ〉!」
「固有魔術〈アラン・ヒルズ〉!」
魔法陣を潜って放たれたアナトによる槍の突きは凄まじい力でローリィに襲いかかる。その衝撃、パワーは周囲の大地を抉り、空気すら裂いて真空を作り出す。周囲の瓦礫もあっという間に粉砕し、砂となって散っていく。
それに対抗して展開したローリィの多数の魔法陣からは巨大な炎の弾がいくつも飛び出し、まるで流星のようにアナトに向かって落ちていく。また、剣を強く振るい、〈スヴァローグ・プラーミャ〉で〈デフィキエレ・コンフォデレ〉と拮抗状態を作り出す。
アナトとローリィ、二人の中間距離で二つの力がひしめき合う。放った隕石がどんどん崩壊していき、炎も掻き消されていく。だが、アナトの突きで放った衝撃もどんどん出力が低下していく。
そして──
とうとう〈デフィキエレ・コンフォデレ〉はローリィに到達する。が、その時にはかなり威力が弱まっており、ローリィの体に強い負荷を与えるが、倒すまでには至らなかった。と言っても腕の骨が折れて、内臓にダメージが入り、大きく吐血している。
だが、彼女が耐えた事には変わらない。




