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真の課題 2

 廊下には燃えるモノがさほどなかったからか、あれほどの熱量が周囲に広がったというのに、そこには炎はなく、ただ煙だけが漂っていた。床には絨毯が敷かれていたのだが、それも一瞬で燃え尽き、灰すら残らなかったのだろう。


 城を構成するレンガの一部がドロドロに溶けており、かなりの高熱だったのが分かる。床も、もちろん一部が溶けており、かなり足場が悪化しているうえ、煙で視界の悪い。そんな中、ローリィは一歩、また一歩とゆっくり、慎重に進んでいく。攻撃を与えたのアナトを探して……。


 (煙で少し呼吸がしづらいですね……)


 あれほどの爆発があれば、本来、酸素が燃焼しきってもおかしくはないだろう。しかし、今回起こった現象は燃焼反応ではない。正真正銘、ヘリウスや水素と言った軽い元素を圧縮させて生み出す熱量……核融合による熱だったのだ。太陽のような熱量、というのはあながち間違いではなかった。


 「ゲホッ、ァ!!」


 この煙の世界の中、突如として咳き込む音が響き渡る。これはローリィのものではない。


 「やはりあの程度では倒れませんか」


 そのようにローリィが呟いたその時、周囲に魔力が放出され、それにより空気の流れが発生。煙を払うように風が舞っていく。


 「ったく、やってくれたわね」


 そうして煙を払って現れたのはアナトであった。


 「まさか、核融合起こすとか、絶大級の魔術の中でも神術に近い技術よ。それを可能にするっていうのは、さすがはメイガス・ユニオン最強ってとこかしら」


 「アナタも、あの熱量の中、ほぼ無傷で生き残るとは。さすがです、冒険者最強アナト・サンキライ」


 互いは互いを褒め称え合いながらも、見つめ合う視線は敵意であった。


 (やはり、アナトは特別のようですね。久しぶりに私が本気を出せる相手のようですね……)


 ローリィは多くの任務をこなしてきたが、どれも自分以下。本気を出さないと勝てない戦いもあった。が、それは相手が中途半端に強く、押し切れなかったから、最後に仕方なく本気を出して相手を潰しただけにすぎない。同じダイモン同士で模擬戦などをしたことがあったが、それも正真正銘、最初から最後まで本気で戦ったことはなかった。本気を出したその瞬間、相手が負けるのが常であった。


 また、アナトも同様であった。


 彼女も本気を出す相手はいなかった。もちろん、ここまで強くなるための過程で敗北はあった。屈辱を抱いた時もあった。だが、今の強さに至ったその時から彼女に敵はいなかった。半年前、神都崩壊ではサルワにアムシャと戦った時は本気を出していた。が、その時も出し切ったわけではなかった。二人には逃げられたうえ、あの戦いが終わった後も彼女には魔力的にも、肉体的にも、精神的にも余裕が有り余っていた。


 だからこそ、二人は──


 ((ようやく自分を出し切れる!!))


 そうして最強の二人、その戦いが始まる。

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