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攻城 11

 テルノドの身体中に嫌な感覚が巡りだす。


 もしも刃を交えようなら、勝率はどれくらいなんだ?そもそも自分は生き残るだろうか?知り合いとはいえ、情けをかけてくれるだろうか?


 否……全ての可能性は億を超えた彼方の確率。


 テルノドは深呼吸すると刃を下げ、ザンクウに懇願する。


 「ここで俺は退くから、見逃してくれない?」


 ザンクウは耳を傾けている。が、その言葉に反応を示さない。ただひたすら聞くだけ。


 手応えを感じないが、テルノドは続ける。


 「アンタが強い事を俺は知っている。勝てるなんて、思い上がった考えもしていない。それに俺が冒険者側についているのは調和神アフラとアナトのせいだ。機会さえあれば傭兵に戻りたいと──」


 その時だった。


 テルノドの右隣にあった壁が一瞬で切断され、崩れ落ちる。


 何が起こったか、分からなかったし、見えなかった。


 ただ、ザンクウが刀を左から右へと振り斬った姿だけで状況を察した。


 「確かに、古い知り合いじゃ。それに儂も雇われの身。お前に執着する理由はない。だが──」


 振り斬った刀を持ち上げ、戦闘態勢に戻る。


 「強者と戦うのは兵士の誉れ。喰え、勝てれば自分の糧となる。そう教えたはずだが?」


 それは突然、訪れた。


 あっという間にベスは距離を詰められ、気づけば目の前で上から下へザンクウが刀を振り下ろそうとしていた。


 「ッ!」


 意識する前に体が動き、なんとか咄嗟に避ける事に成功する。しかし、空振った刀は衝撃波を生んでしまうほど凄まじく鋭く、強かった。


 避けたはずなのに吹っ飛ばされ、狭い廊下の壁や天井、床に何度もバウンドしていく。


 また、ベスがバウンドしている壁、床、天井その衝撃波でヒビが入り、少しずつ、確実に壊れていく。


 「ァッ!オォッ、ヵ……!!」


 骨が折れ、内臓にダメージが入る。喉からとめどなく血が這い上がり、口の中に鉄の味が広がる。


 そのベスの姿にザンクウは一切、興味がないようで、独り言のように呟き始める。


 「さすがは神代の建物だな。衝撃波程度では破壊出来ないとな」


 ベスよりも、メイガス・ユニオン本部の城の方に興味があるようだ。


 (俺は眼中になしってことか……)


 ベスが冒険者連合に加入したのは本意じゃない。強制的だった。しかし、それは調和神アフラに認められたということでもあり、自分が強いということの証明でもあった。その後も剣聖ミトラの指南役として抜擢され、自信もあった。


 ザンクウに勝てる、そんな事はこれまで一ミリたりとも考えたことはなかった。とはいえ──


 「屈辱だ」


 ベスは脚と腕に力を入れる。衝撃波だけで大きなダメージを負ってしまった。命に別状はないかもしれない。だが、戦闘続行出来るような状態ではない。


 それでも、起き上がろうとする。


 最低限の知識しかない魔術を用いて、身体の修復を試みながら。


 「ッァ………ふざァ、けるなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 口の中に残った血を唾と一緒に吐き捨て、剣を握りしめる。

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