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攻城 10

 「ちっ、突っ走ってたら何処まで来たか分からなくなっちまったな」


 ベスは城内部にいる兵士を斬り殺しながら、廊下をゆっくりと歩いていた。


 彼は冒険者連合に加入する前、アイギパーンと同じ傭兵団に所属していた時代にメイガス・ユニオンへは昔に来たことがあった。そのため、かなり見覚えがあった。とはいえ、数回依頼を受けて出入ったことがある程度。詳しくなれるほど内部の構造を知らなかった。


 「アナーヒターについていけば良かったか?」


 確か彼女は元はメイガス・ユニオン所属の魔術師だったはず。それも数十年も昔の話であるため、内部の構造が多少、変わっているかもしれない。しかし、全くの無知であるよりも頼りになるはず。


 一瞬、引き返すことも考えたが、迷ってしまった今の状況で元来た道をちゃんと辿れるか分からない。であれば前に進むのみ。


 「んまぁ、歩いていればなんとかなるだろ」


 いざとなれば、壁を破壊して外へ出ればいいし。


 そのように軽く思っていると──


 「ッ!?」


 一気に空気が変わる。


 それは気温とか、湿度とか、そういう話じゃない。


 科学的に証明出来るモノではない。しかし、それは確実に皮膚を通して感じ取れる気配。


 …………殺気だ。


 ベスはすぐさま殺気を感じる廊下の先にある右の曲がり角を見つめる。そこから現れたのは──


 「ほぉ、久しぶりじゃのう、ベス」


 鬼の仮面をした、両手に刀を持った男。髪の色は白く、老体であるのが分かる。しかし、その背筋の良さから年齢に似合わない逞しい肉体をしているのが分かる。


 そう、この男はメイガス・ユニオンに雇われた傭兵であり、トーゼツを襲った男。


 ザンクウであった。


 「数年ぶりだな、師匠……」


 そう、ベスは傭兵時代、ザンクウによって剣技を学んだ者の一人だったのだ。


 「師匠……か。勝手についてくるから、勝手に相手していただけじゃがな。まぁ、それでも少しは成長したようじゃな。姿勢も、剣の持ち方も洗練されているうえ、気を抜く所は抜いている」


 三流は何処か抜けている。二流は抜けがなく、油断も隙もない。しかし一流は抜く所は抜き、無駄を省く。これがザンクウから教わったことだった。


 しかし、成長した今、ザンクウを見るとよく分かる。


 (このジジイ……本当に抜けているのか?全く油断も隙も見えない!!)


 それに対し、ザンクウは一目でテルノドの気を抜けている部分を見抜いた。それほどまで実力差が開いているということだ。しかし、ザンクウから剣技を学んでいた若い頃はもっと酷かった。模擬戦で手合わせする時なんかはザンクウからは殺意、敵意しか感じなかった。実力差が開いているということすら分からなかった。そう考えれば自分は成長したという事だ。


 ……成長した所で実力差が圧倒的だということには変わらないようだが。

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