攻城 9
アナーヒターや、ベス、ミトラも数秒間は困惑していた。が、すぐに落ち着いて魔法陣を見る。
(あー、これは……なるほどね)
アナーヒターはすぐに魔法陣内部の図式からどのような仕組みなのか、何の物理式、魔術式を使っているのか。そこからこの術を打ち消すためにはどのようにすれば良いのか。それを読み解き、無重力状態からなんとか解き放たれる。
アナーヒターは周囲にいたベス、ミトラもすぐに術から解き放つ。
「うわっ!?」
突如として解放されたため、ミトラは態勢を崩しながら地面に尻餅をつく。
「ふぅ、助かったぜ」
それに対し、ベスは上手く足から着地して見せる。
「ったく、どういう仕組みだよ。この術式は……?」
ベスは魔法陣を眺めながらそのように呟く。
それに対し、アナーヒターはこのように返す。
「確かに化け物じみた魔術だけど、これほどの広範囲だ。結構大きな穴がある。魔術理論も完璧じゃない。冷静で知識のある奴はすぐに術を解いてくるぞ」
彼女がそのように発言している最中、まさに一部の敵、味方がアナーヒター達のように無重力から解放されて地面へと降り立っていく。
しかし、先ほどのような乱戦状態にはならないだろう。
ここから先は四大聖や、四大聖になれるほどの実力を持った戦士の戦い。
「アナト、この術式の効果時間は?」
ベスが質問する。
「私が魔力を流し続ける限り継続展開される」
「なるほどね、時間を気にせずに攻めれるわけだ」
そう言って、ベスは脚に魔力を纏い、地面を蹴り上げて一気に駆けていく。
「シャルチフ捕らえて、さっさとこんな戦争を終わらせるぞ!!」
ベスはあっという間に降りて来た敵を斬りつけ城内部へと侵入していく。
「私たちも行くか」
アナト達もまた、城内部へと入っていく。
その様子を城の上から眺めている影が複数。
一人はメイガス・ユニオン最大戦力の一人、ダイモンのチャミュエル・ローリィであった。
「さて、私たちもそろそろ戦わかなければいけないようですね。」
彼女はそのように呟く。
「はぁ、私はあまり戦う事は好きではないんですがね、仕方ない。ハニエルも殺されてしまったことですし、敵討と行きますかね」
その隣にいる灰色の髪をした男──ラツィエルはチャミュエルの言葉に反応するように、ぽつりとめんどくさそうに言いながら立ち去っていく。
「あれはハニエルの馬鹿がやらかした事だと思うけどねー。私もほどほどに戦ってー、殺されないように頑張るよー」
最後に残っていた金色の髪をした少女──ゲーブルもまたそのように言い捨て、自分の仕事へと向かう。
冒険者連合の四大聖と、チャミュエルを筆頭としたダイモン。彼ら彼女らの戦いが始める。




