攻城 7
冒険者連合の侵攻はどんどん激化していく。結界の穴がさらに大きく広がり、どんどん侵入してくる冒険者の数が増えていく。
メイガス・ユニオンの兵士たちは勢いの止まらない冒険者に対し、無駄のように感じる抵抗を続ける。魔術、兵器による放射攻撃。それはもう敵、味方関係なく発射し続ける。
しかし、冒険者連合もここで怯んで止まるわけにもいかない。援軍が来て拮抗状態を作られたら厄介だ。このまま押して進む。それが一番、被害の少ない道だろう。
「前だッ!前に進め!!」
その言葉と共に、恐れずに前へ飛び出し、メイガス・ユニオンの兵士を倒し続ける。
「良し、このままいけば本部へと突撃出来るな」
アナトは槍を大きく振って、付着した血を振り払う。
さぁ、メイガス・ユニオン本部である城まですぐそこだ。城を攻略し、シャルチフ会長を捕えればこの戦争は終わる。そう思っていた。
だが、本当の地獄はここからだった。
「なんだ、あれは?」
一人の冒険者がそのように呟く。
その方向はメイガス・ユニオン本部の城。城には四方から出入り出来る門があり、それは北門からであった。突然のことであったため、まるでお入りくださいと言っているかのように感じた。
が、北門からあるモノたちが津波のように飛び出す。
それは半透明の皮膚を持った、人の形をしたようなナニカ透けて見える体内は炎のように真っ赤で、血液が循環しているのが見える。さらに半透明の肉体はスライム状のようなものらしく、かなり形が不安定だ。また、頭の上に光り輝く輪が出現しており、神々しいようでいて、それは醜い姿にも見える。
魔物ではない。しかし、人でもなければ、獣でもない。
この世には居てはいけないナニカ。
それが何百体、何千体と飛び出して冒険者、メイガス・ユニオンの兵士、両陣営もろとも襲いかかる
「な、なんだァ!?」
メイガス・ユニオンの兵士もその正体は知らないらしく、津波のように襲いかかるそれらに為す術なく押しつぶされていく。冒険者たちも一部はその津波に攫われていく。
メイガス・ユニオンも冒険者連合も指揮統制が取れなくなり、敵味方関係のない戦々恐々へと陥る。
「くそッ、君が悪りィなァ!!」
ベスは無詠唱で上級剣術を発動させ、冷気を纏わせた刃で化け物の津波を断ち切る。しかし、奥からさらなる数がどんどん押し寄せる。これは対処不可能だ、と判断したベスはすぐさま刃で化け物を斬りながらも後ろへ少しずつ後退していく。
ミトラとアナーヒターも困惑しながらも、己の技量で化け物を倒し、生き残ろうと対処していく。
「もしかして、これは──」
ミトラはこの化け物に心当たりがあった。
数ヶ月前、トーゼツと一緒にメイガス・ユニオンへ潜入した際に見た、あの資料──
そして、かつてはメイガス・ユニオン所属の魔術師だったアナーヒターも同様にこの化け物たちの正体を理解していた。
「これを出してくるなんて……シャルチフの野郎、罪深いなッ!!!」
二人は怒りを露わにしながら、化け物たちを殺していく。
それがせめてもの情けだと知りながら。




