攻城 6
下級兵とファブリア少将の応答によって状況がよりハッキリしたことで周囲の者たちも落ち着き始め、冷静に考え始める。
「まずは、バリアの補強、侵入者の押し出しもとい殲滅、の二つですかね」
一人の兵士がそのような意見を出す。
確かにその通りだ。ファブリア少将もその答えへと辿り着いていた。であれば、取れる選択は一つしかない。更に人、物資を前線へ送るだけで良い。
しかし、現在進行形で侵攻されている以上、もう既に事態は変化している可能性がある。
現在の状況、そしてその先の行動を考えて計画を練らなければならない。
(とりあえず応援を送るか……?いいや、送って兵士が無駄死にすることがあってはならない。ただでさえ人数不利なんだ。くそっ、どうする?)
ぐるぐると思考を巡らせているその最中──
「あれを……出せば良いではないのか?」
コツコツと足音を鳴らしながらそのように言ってくるのはメイガス・ユニオンの頂点であるシャルチフ会長であった。突如として現れた上司に驚きながらも、ファブリア少将はすぐに心を落ち着かせる。
「シャルチフ会長、この時間帯は研究している時間だったのでは?」
「嫌な予感がしてね。いわゆる‘勘‘ってやつだよ。それに実際、冒険者が侵入してきているんだ。私の勘は正しかったと言わざるを得ないだろう?」
ファブリア少将は強い違和感を覚える。
それは本当に勘なのだろうか?
シャルチフ会長はいわゆる『運』が良いタイプだ。
シャルチフ会長は若い頃は軍人で、その後は政治家、今ではその権力を以てメイガス・ユニオンを創立してきた。外敵も、政敵も、あらゆる方面で敵を作って来た。
エルフはほかの種族よりも長い年月を生きる。現在、シャルチフ会長は三百歳ほどだ。エルフの中ではかなりの長生き。ただ、敵が多い彼は──いいや、今もなお敵を作り続ける彼が生き残っているのはただの運なのか。それでも──
「さて、今、重要なのは冒険者連合を追い返すことだ。そうだろう?」
ファブリア少将が全く別の事を考えているのがバレたのか、シャルチフ会長はそのように述べたのちに、今後どうするべきか。命令を言う。
「ファブリア少将。君の持つ師団を以て前線へ向かい給へ。あのアナトであっても、人数さえいれば抑え込めるだろう。まあ、時間を稼げれば良い。時間を稼いでくれている間にダイモンを招集させる。そして、先ほども言った|あれ《・・〉を出す」
「あれですか。しかし、あれは敵も味方も見境ないですよ?」
「だから何だ。もう冒険者は侵入された。もうどうのこうの言っている段階ではない。全面戦争だ。今日、ここで勝者を決めるのだよ。我々、メイガス・ユニオンか。それとも、冒険者連合か……」
そのシャルチフ会長はとても興味の無さそうな表情であった。
メイガス・ユニオンが勝とうが負けようが、自分には関係ないと言ったような──
それにファブリア少将はさらに違和感、不安を持ちながらも、彼の言う通り、自分の与えられた師団を以て前線へと向かっていく。




