攻城 3
最前線で出ていたアナト、ベスはヒビの入ったメイガス・ユニオンの結界に攻撃を入れて穴を開けようとしていた。
「上級剣術〈大切断〉!」
ベスは剣に魔力を纏わせ、詠唱をすると、バリアに向けて上から下に向けて思いっきり刃を振り下ろす。その重みと威力、そして勢いは凄まじいモノであった。が、バリアには大したダメージは入らなかったようだ。逆にバリアにぶつかった反動が剣を通じてベスの腕へと向かい、身体中を痺れさせる。
「硬ってェな!!」
「だったら……絶大剣術〈ケレリタス〉!」
ベスが痺れている間、今度はミトラが絶大剣術を入れ込む。刃がまるで光の如き速度でバリアへを斬り刻んでいく。だが、それでも──
「まだ、届かないの!?」
ヒビは入っているというのに……。一体、メイガス・ユニオンのこの結界はどのような仕組み、理論で展開しているというのだろうか。
ベスが再び剣術を使おうと、魔力を生成し、詠唱しようとした。が、メイガス・ユニオンがそれをずっと見逃してくれるわけではない。バリア越しに魔術攻撃が放たれ、ベスとミトラに襲いかかる。
が、その全てが空中で着弾し、かき消されていく。
「結界だけに集中していると反撃喰らうわよ!」
それはアナーヒターであった。
空気中の水分をうまく操作し、魔術攻撃を防いだのだ。
アナーヒターはさらに周囲の水分を右手に掻き集めると、水の矢を生成。
「上級弓術〈アーエール・バットゥエレ〉!絶大魔術〈アクア・インヴァーデレ〉!」
詠唱と同時に弓の前に二つの魔法陣が展開。その魔法陣の中を潜らせるようにアナーヒターは矢をバリアのヒビの入った箇所へと勢いよく発射する。
ベスとミトラの攻撃はあまり効いていなかった。が、アナーヒターの矢はバリアを貫通し、突き刺さる。その事から、かなりのダメージが入ったと見れる。
だが、そこでは終わらない。
水の矢がまるで薬品のように溶けたかと思えば、バリアの内部へと侵食を開始する。まるで葉を食べる芋虫のように、それはじっくりと、しかし確実にバリアを侵していく。
あともう少しで完全に破壊出来る。
「最後は私に任せろッ!!!」
そこへ追撃入れようと飛び出したのは、アナトである。
魔術師部隊がバリアにヒビを入れるために力を合わせて展開させた以上に巨大な魔法陣をアナトは出現させ、魔力を流し込む。魔法陣内部の文字、図形がまるで機械の歯車のように呼応し合い、莫大なエネルギーが渦巻き始める。
やはり、彼女こそ冒険者連合を代表する冒険者であり、その姿はまさに神の如き──
「ははッ、やっぱ化け物だな……」
ベスはアナトを見ながら呟く。




