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案内人 7

 数時間後……。


 シリウスの手助けによってハティを追い払う事に成功したトーゼツとロームフは改めて火を起こし、焚き火を囲みながら一休みしていた。なんなら眠りに落ちてしまいたい所だが、そこまでは心は落ち着けないし、シリウスには色々と聞いておきたい事も多い。


 とりあえず周囲の雪を適当に拾い、焚き火で溶かし、沸騰させるとそのお湯を飲んで体内の減った水分を確保すると同時に冷えきった体を温めていく。


 やはり、魔術で体温を強制的に維持させている状態とはいえ、寒い所で飲む温かいモノというのは体だけではなく、心も暖めてしまうモノだ。


 しかし、ロームフの心はざわついたままであった。


 「…………」


 トーゼツの体を見る。


 今のところ、大きな負傷はないようだ。だが、それはトーゼツの固有技能で傷口を治したからである。服のあちこちが獣に食いちぎられたように破けており、また乾いた血の痕跡もあちこちに付着している。


 ロームフが逃げたあの後、きっとトーゼツは四方八方から喰われ続けたのだろう。それを固有技能で治しながら、戦い続けた。


 トーゼツは言った。自分は固有技能があるから大丈夫だ、と。しかし、痛みがなくなるわけではない。恐怖もあるだろう。死ぬ可能性だって限りなくゼロに近くなっているだけで、完全なゼロではない。


 自分のせいで、再びトーゼツを危険な目にさせてしまった。


 (………俺はこのまま、退くべきなのだろうか…)


 そのような考え事が頭の中でぐるぐると回り続けていた。


 そんなロームフに気づかない様子で、トーゼツはシリウスへと話しかける。


 「さて、シリウス。色々とお前に聞きたいことはある。まぁ、ロームフから案内人として来たというのは聞いているが、改めて聞かせてくれ」


 「ここから先は………戦争が激化、している…場所。地形も、一部……変化している。本当に、危険地帯。だから…ロームフの代わりに、更なる案内役……として、来た」


 確かに、ラジオで聴いていた戦場状況では、魔術による大規模攻撃で森は焼け、平原は消滅し、あちこちが泥地へと変わってしまったと言っていた。また、一部の山岳が切り開かれたり、場所によってはしばらく人が住めないような環境になったとも。


 つまり、これから先はロームフの地理知識が通用しない可能性が高い。


 それに、シリウスは話していないがロームフがメイガス・ユニオンと繋がっている可能性が捨てきれないからこそ、冒険者連合がロームフよりも信頼出来るシリウスを寄越して来たという事もあるだろう。


 「なるほどね、それじゃあ、シリウス。改めてここから先の案内、よろしくな。お前の実力は聞いているよ。頼りにしてるぜ」


 「任せて」


 そうしてシリウスとトーゼツは硬い握手を交わす。


 それを横から眺めるロームフの顔は、少しばかり曇っていた。


 

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