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案内人 3

 ハティは焚き火を中心にトーゼツ、ロームフが逃げられないように囲んで、こちらを観察している。


 この危険な状況にロームフは学生の時、この辺りの地理研究をしている者として違和感を覚える。


 (しかし、ハティは警戒心が強く、見慣れないモノには不用意に近づかないはず……。焚き火の炎や人間にこれほどの距離まで接近するのは異常ですね)


 ハティに限らず、本来動物がしない、このような危険行為をする場合は必ず何かしらの要因が発生しているはずだ。例えば、環境変化によって植物が減り、食料となる装飾動物の数が減っている、人間によって狩猟されることで数が減ることで人間を敵と認識している、などだ。


 一体、何がハティをここまで駆り立てているのか。


 (……今は分からないな。とりあえず──)


 トーゼツの体を揺らし、彼を起こす。


 「トーゼツ、魔獣に狙われています。少数なら私だけでも対処出来るのですが、明らかに数が多いです。ここは一旦、逃げましょう」


 起きたばっかのトーゼツはまだ意識がふわふわしていた。が、さすがは冒険者、命の危機にかかわる事であるため、すぐさま意識を切り替え、ロームフに尋ねる。


 「……より具体的に教えろ。魔獣の種は?目算で良い、数は?」


 「狼系で、数は十頭以上はいるかと」


 「十頭か……狼の群れにしては多いな」


 トーゼツはロームフと違って魔獣の研究などはしたことない。が、やはり旅する冒険者。ある程度、獣に対処するための知識を備えていた。


 狼の社会というのは基本、血の繋がりで成り立っている。そのため、群れの数も四頭、五頭の構成。多くて八頭ほどの程度。しかし、今回は十頭以上はいる。これはさすがに多すぎる。


 「メイガス・ユニオンと冒険者連合による戦争の影響かもな」


 現在、セレシアのあちこちでは物資が不足している。戦争に使う火薬に鉄などはもちろん、食料も同様だ。セレシアに狼を食べる文化はない。が、狼の食べる草食動物、これは人も食べられるモノであり、戦時中の今は食糧として狩っているのだろう、生態ピラミッドが崩壊するほどに。


 また、狼は駆除の対象であり、同じ獲物を取り合う敵でもある。相当な数を駆除してしまい、一匹になってはぐれた狼同士の群れが出来上がった結果、これほどの多さの群れになった可能性がある。


 「これは……逃げ切れるか?」


 「さぁ、でも、このまま正面から数も分からない魔獣を相手するのも嫌ですよ」


 確かに、闇夜の中から見える眼の数から考えた目算が十頭以上。群れで狩りする以上、追いかける役、遠くから観察する役、命令するリーダー役と分かれているだろう。となれば、接近せずに、遠くでこちらを見ている狼だっている可能性は大いにある。


 「そうだな。んだったら逃げつつ倒して数を減らしていく。そしてある程度撒けたら木の上に避難してそこで一晩過ごすか」


 「了解」


 そうしてトーゼツは指輪の力で双剣を取り出し、ロームフは杖を構える。

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