案内人 2
ロームフは燃え尽きない様に、適度に新たな木を入れて焚火を維持しつつ、考え事をしていた。
自分の選択は間違っていなかっただろうか、と。
ザンクウと対峙していたあの時、明らかに自分は足手まといになっていた。もしも自分がいなかったら、トーゼツとテルノドは全く異なった選択が出来ていたんじゃないだろうか?
足手まといの自分を庇うことなく、正面から二人、本気でぶつかる事が出来たんじゃないのか?
そもそも、自分はどうしてここにいるのか?自分は案内人として呼ばれた。それは理解出来る。自分は適任かもしれない。とはいえ、弱すぎる。もっと適した者が冒険者連合側にいたのではないだろうか?
トーゼツと一緒に行ける、そう思ったからこそ、俺はここにいる。
だが、それで足を引っ張ているのであれば──
いいや、それよりも前かもしれない。
自分の突き進みたい道が分かって、トーゼツに憧れを感じて、メイガス・ユニオンを裏切ってシャルチフ会長を後ろから刺したあの時から間違えていたのかもしれない。
世の中には、身の丈、という言葉がある。
自分の気持ちは偽りたくない。しかし、その想いが自分の身の丈に合っていないのであれば──
自分の気持ちに気づいた、それすら間違いだったのかもしれない。
過去は戻らない。選択は無数にあった。だが、選び取れるモノは一つだけだ。何が正しくて、何が間違っていたのか。それは結局、分からない。そしてそれは、トーゼツでも、ザンクウでも、神様であっても同じことだろう。
大事なのは過去ではない。大事なのはこれから。今、目の前に広がる選択肢の中から、最も正しいと思えるモノを選び取ることだ。
そうは、分かっているのに……。
「…………くそっ、どうすれば良いんだ。俺は」
と呟いたその時──
「ッ!!」
何かの気配を強く感じる。一瞬、ザンクウか?と思ったが、少し違う。あれほどの実力者であれば、ロームフ程度に気配が気づけるとは思えない。それに、人の気配ではない。
「獣か、それとも魔物の類か……」
一本の枝に布を巻きつけ、簡単な松明を作ると焚き火を使って火をつけ、気配のする方向を松明の明かりで確認しようとする。
すると、ギラリ、と光る複数の何かがあった。
そう、目だ。
獣のような目が松明の明かりに反射して、暗闇の中から現れたのだ。
ロームフはかつて、ここに訪れたことがあるため、すぐに理解する。
(確かこの辺りには狼系の魔物……ハティが生息していたな!)
ハティは狼らしく集団行動する社会性を持つ夜行性の魔獣だ。また魔力による簡易的な肉体強化を行うことが出来る上、聴覚、視覚も優れているという。さらに魔術を用いるのも確認されており、周囲の光を奪う術を使うという。ただでさえ暗い闇夜の中、月の光、星の光さえも奪うことで相手の動きを制限するという恐ろしい魔獣である。




