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籠城戦 2

 場面は変わり、そこはメイガス・ユニオン本部内。コツ、コツ、コツと廊下を歩くのは一人のエルフの老人。それはメイガス・ユニオンの権力的頂点に立つシャルチフ会長であった。国の政治的にも、組織の権力的にも、そして外部でも敵を多く持つ彼は、本来であれば護衛をつけている。のだが、戦況が劣勢であるため、護衛兵も戦場へと出ており、現在は一人なのだ。


 「……ふむ、少し腹が減ったな」


 元々、健康的な生活を送るような性格ではなく、研究に没頭して三日、四日は何も飲まず、食わずの生活をする事が多かった。とはいえ、一か月はまともなご飯を食べる事が出来ていないシャルチフは気力も、体力もかなり半減していた。


 そこに突然、シャルチフ会長は脚を止めて、振り返る。そこには何もない。しかし、その一方向を見つめてぽつり、と呟く。


 「その程度の術で隠れているつもりか?」


 返事はない。しかし、その言葉と同時にダンダンッ!と廊下の床を強くけり、走って向かってくる音が響いたかと思うと、その音に合わせてシャルチフ会長も動き始める。それはまるで刃物を避けるように、左右に避けたり、腰を下げ姿勢を低くしたり。


 「メイガス・ユニオンの戦士に教えられるその魔術による身体能力向上に、拳に魔力を纏わせて戦う近接格闘術を生み出したのは私であり、キサマ如き未熟者に負ける私ではない!!」


 そういって、見えないナニカを掴むと同時に背負い投げするように地面に叩きつける。


 「ッ!!」


 その衝撃だろうか、何もいなかった所にナイフを持った一人の男が現れる。エルフであり、杖を背負っている姿からしてメイガス・ユニオンの魔術師だ。


 「この私を簡単に殺せると思ったのか?馬鹿者め」


 そういって、シャルチフはその男の首を掴み、問答無用で男を殺そうとする。


 「ッ、ァ!!」


 男は抵抗しながら、声を絞り出して話し出す。


 「こんな、事を……いつまでする気、だッ………!」


 どんどん首を掴む力を強めていく。


 「俺の……友が、死んで………メシもロクに食えな……ンァ!ッ!!くそがッ!!」


 呼吸が出来ない。脳に酸素が回らない。苦しい。それでも、言葉を紡ごうとして──


 「ッッッ………………………………!!!」


 言葉にならない叫びを挙げながら、気絶し、それでもしばらく首を絞め続ける。そうしてとうとう男は死んでしまう。


 「ったく、愚か者め」


 男の死体を見下ろす。自分を殺そうとしなければ、まだまだ長生き出来ただろうに。


 「アナタは容赦がないですね」


 そのように声をかけるのはセレシアの英雄であり、ダイモンの一人、チャミュエル・ローリィであった。いつからそこにいたのか、いつのまにか廊下の壁によりかかってこちらを見ていた。

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