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サムライ 7

 ザンクウの任務はここを通すな、という事であった。


 魔術師は基本、遠方や中距離からの支援攻撃もしくは今回のように魔力増強、身体能力増強といったサポートに徹するのが戦いの基本。アナーヒターのように単独で戦える術師も少なからずいるのだが……そういうのは術聖レベルでないと無理な話。特にテルノドは戦士ではなく、研究者としての一面が大きい魔術師だ。


 知識レベルで言えば術聖を超えているだろう。だが、実戦となると別だ。


 ザンクウは傭兵として色んな任務をこなし、色んな戦士を相手していたからこそ、テルノドが戦いの得意な魔術師ではないというのを感じ取っていた。


 トーゼツは胴体を大きく引き裂かれ、倒れている。まだ意識があるようだが、戦闘続行出来る状態ではない。治癒するという選択肢もあるかもしれないが、上級魔術を用いたとて、それなりの時間を要するのは魔術を知らないザンクウでも分かる。


 であればもう勝敗は決まったも同然。


 「分かっているじゃろう。もうこの戦いに意味はない。ここは逃げるべきじゃないのか?」


 ザンクウはそのように問いかける。


 しかし、彼らは逃げない。


 「戦うという選択肢を取ったのは確かに私たちだ。でも、うちの仲間が一人やられてんだ。そうそう引き下がるわけにはいかないでしょう」


 テルノドは覚悟を決める。


 足手纏いにならないよう下がっていたロームフも杖を構え、戦闘体制を取る。


 「面倒じゃなぁ。とはいえ、一人の男が覚悟してるんだ。儂もその覚悟を受け止めようじゃないか」


 そうして再びザンクウは地面を蹴り上げ、テルノドの距離を一気に詰める。トーゼツにも見えなかったその動きに、テルノドは認識出来るはずもなく、しかし──


 「来るって分かっていたよ」


 それは音もなかった。


 ただ、ザンクウが振り下ろした刀の先が消滅していた。斬られた、砕かれた……そういう話ではない。元から無かったかのように……跡形もなく刀先が消失しているのだ。一体、何が起こったのか、ザンクウは理解出来ずに呆気に取られていた。そこをテルノドはすぐさま魔法陣を展開し、詠唱する。


 「絶大魔術〈スペティウム・インフラトォス〉」


 その瞬間、周囲に凄まじい衝撃が奔る。それはまさに爆発したようで、しかし熱は感じず、爆炎も発生することなく、ただ何かが破裂したような衝撃が周囲に襲いかかる。


 だが、ザンクウはその衝撃すらも魔力を纏った刀で振り払い、無効化する。


 「マジかよ……空間を収縮させて生んだ衝撃すらも刀でどうにかしてしまうのか」


 テルノドは驚きながらも、次の一手を打とうと再び空中で魔法陣を展開する。のだが──


 「させんッ!!」


 ザンッ!とその魔法陣すらも刀で断ち切ってしまう。


 空中で展開された魔法陣が魔力によって描いたモノだ。魔力とはエネルギーだ。熱や電気のように触れるわけでもないし、実体があるわけではない。言わば概念のようなモノに近い。それをなんと、刀で断ち切ってしまったのだ。

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