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サムライ 6

 ザンクウは両手に力を入れ、刀を振り始める。右から左へ横に、上から下へと縦へ。斜めや下から大きく振り上げたり……。その度に素早く、鋭い斬撃がトーゼツに向かって飛んでくる。


 トーゼツはその攻撃をギリギリで見切り、躱わす。肌に小さな切り傷が出来てツー、と血が流れ始める。あた次の瞬間には髪の毛の一部が落ちていく。


 これでもテルノドに魔術によって身体能力を底上げしている。というのに──


 (攻撃速度に、威力……その全てが異常すぎるッ!!)


 最初は避けながらザンクウとの距離を詰めていたが、少しずつ躱しきれなくなっていき、とうとう動きが完全に止まってしまう。


 「ッ!」


 ザンクウの斬撃で地面の氷が砕け、その破片がトーゼツの眼に入る。そこに容赦無く、追撃をザンクウは入れる。それを必死に避けようとした。のだが、右手が切断され、落ちそうになる。がそこをテルノドがすぐさま治癒を行い、接着させる。


 「すばしっこい奴じゃの。上手くいけば首を取れたんじゃが……」


 ザンクウはこれ以上、無駄に斬撃を入れても押し切れないと判断した彼は一旦、刀を下ろして攻撃を止める。その合間にトーゼツも呼吸を整える。


 (魔力で身体能力を上昇し、そこにテルノドの術でさらに底上げしてるのに……体が熱い……!呼吸も追いつかねぇし、汗も止まらねぇ……!)


 北方の風に寒さすら感じないほどに肉体の疲労が溜まったトーゼツは落ち着き、深く深呼吸を繰り返す。


 「さて、小手調べは終えたし、そっちの休憩も終わったかな?では、そろそろ本気で行くぞ」


 その言葉と共にザンクウの刃に纏う魔力量が増大する。


 そして──


 「ッ!!」


 気づけばトーゼツの前にザンクウが立っていた。刃を構え、こちらに振り下ろすように。しかし、トーゼツはそれを咄嗟に躱わす。それはザンクウの攻撃を認知しないで行った、まさに本能の避けであった。避けたのちに、彼はようやく認識する。ザンクウの攻撃を自分は避けたのだ、と。


 「ほぉ、これを避けるか」


 そのように呟くがその声色には一切、驚きはなかった。そして上手く手首を使い、流れるように刃を返し、続けて斬りかかる。


 再びそれを避けようとしたのだが、単純に速度の問題で間に合わない。ザンクウのまさに音速のような刀にどうすることも出来ず、刃はトーゼツに到達する。


 「ァッ!!」


 皮膚を裂き、肉を斬って、骨すらも断っていく。青く、透き通った氷の地面に暖かく、赤い液体がこぼれ出る。だがその血もすぐに渇き、凍っていく。


 「さて、こんなモノか」


 刀を引き抜き、血と油がついた刃をブンッ!と勢いよく降って払う。その刃は依然と美しく、刃こぼれ一つなかった。そこにテルノドは驚く。


 (刀は繊細な武器。単純に魔力を覆うだけで刃が耐え切るわけがない。緻密で、尋常じゃないほどの優れた魔力操作によって為しえる技……やっぱりザンクウは只者じゃないですね)


 トーゼツが倒れた今、自分が戦うしかない。


 テルノドは杖を構える。

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