サムライ 4
トーゼツ以外の二人も杖を構え、戦闘態勢を取る。
ザンクウはその姿を見て、とてもめんどくさそうに告げる。
「今ならまだ間に合う。引き返すと良い。儂は見なかったことにするし、ここを警備するようにしか言われておらん。別ルートで侵入する方が賢明だと思うんじゃが?」
「俺たちは地図に穴が開くんじゃないかってレベルで確認したんだ、他の安全ルートなんでないよ。それにせっかくここまで来たんだ。押し通らせて貰う!!」
そう言って最初に氷の大地を蹴り上げ、攻撃を仕掛けたのはトーゼツであった。
まさに音速近いスピードでトーゼツはザンクウへと接近。右手に持っていた赤い刃の剣に凄まじい熱気と炎が纏わりつき、そのまま勢いよく上から下へと斬り下げる。
ザンクウはそれを刀一本ではじき返し、また襲い掛かる炎を身に纏った少ない魔力だけで防御する。そして、そのまま鍔迫り合いになっていたトーゼツを片手の力だけで押し戻す。
「ッ!!」
なんてパワーだ。
それだけじゃない。
魔力だけで剣の炎を防いで見せた。
この炎と熱は上級レベル以上の火力はある。膨大な魔力を纏うか、せめて何かしらの防御魔術を使用しなければ身を守れない。というのに、それを少ない魔力量で……?
トーゼツはザンクウをより観察する。
彼の身を守っている魔力は不定形に、まるで流れる水のように巡っている。
「綿密な魔力操作だけで守った……ってことか」
最初の一撃で理解する。
ザンクウは自分を遥かに凌駕する達人である、と。
だが、それで勝敗が分かつ訳ではない。こちらも人数的にも有利がある。そのうえ、トーゼツの固有技能である『不屈の魂』があれば、ゾンビ戦法も可能というわけだ。
この状況を打開する方法はある。
「色々と思考を巡らせているようじゃな。創意工夫するのは大切じゃからな、もっとしろ。そして儂を楽しませることじゃな!!」
そういってザンクウは右手に持つ刀を上から下へと軽く振る。その瞬間だった。振った刃から斬撃が飛び出し、川を張る氷を綺麗に真っ二つにする。その断面は美しく、まるで鏡のよう。それだけでこれが単純な力技ではないことが分かる。手首を上手く使い、そして素早く、必要最低限の力で軽く振ったその一撃に考えきれないほどの技術が込められた一撃であった。
「「「ッ!!!」」」
氷が割れたことでまるで地震でも起きたかのような揺れが三人に襲い掛かり、大きく態勢を崩す。
そこにザンクウは容赦なく斬りかかる。
今度は右から左へと刃を斬り払う。
「まずいッ!!」
トーゼツは飛び出し、飛んでくるであろう斬撃を防ぐ構えをする。テルノドであればザンクウの斬撃に対して問題はないだろうが、ロームフは別だ。防御どころか、見切って避ける、躱すのも難しいだろう。だからこそ、トーゼツは受け止めなければならない。




