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サムライ 2

 この寒い中、軽い雑談をすることで少しでも寒さを誤魔化していく三人だったが、しばらく歩くともう国境警備する軍隊の姿は見えなくなる。どうやら完全に見つかる事なくセレシア国内へと無事に入れたようだ。


 三人は気を緩め、魔力を熱に変換したり、血液の流れを活性化させることで体温を上げて寒さを和らいでいく。


 「ふぅ、ここまで来れば安心ですね。ここら辺で少し休みませんか?」


 テルノドははぁ、と息を吐いて手を温めながら発言する。


 体力としては三人ともまだまだ歩けるのだが、ここから先、いつ戦闘になってもおかしくはない戦場の地。ゆっくり休めるのもここで最後かもしれない。


 「そうだな、んじゃあ、ここで一旦──」


 その時だった。


 テルノドとトーゼツは何かの気配を察知し、その場から離れると、バスンッ!と二人が先ほどまで立っていた氷が粉々に砕けていく。ロームフは気配を感じることが出来ず、また二人の動きに合わせることが出来ず、川の中へと落ちてしまう。


 「ロームフ!」


 トーゼツはすぐさま川の中へと手を伸ばし、ずぶ濡れになったロームフを引き上げる。その直後から濡れていた服が凍り始め、ロームフの体温がどんどん奪われていく。


 「大丈夫か!?」


 「なんとか……しかし、一体何が起きたんです?」


 そうしてロームフは衝撃のあった場所を確認する。


 そこには、一人の男が立っていた。着物姿で、鬼の仮面で顔を隠した見知らぬ男。髪が白い事から老体であるのが分かる。そして両手には、二本の刀。


 「あれは……刀か。珍しいな、俺とか、ポットバック以外の奴が持ってるのは久しぶりに見るな」


 トーゼツは強く警戒する。それに対し、ロームフは刀の存在を知らないようで、あの曲線の刃を持った武器がどれほどの脅威なのか、理解していなかった。



 この世界において、刀は数千年前にあった極東の国の武器であるとされている。


 その極東の国はスールヴァニアのように独自の神話、信仰を持っている国で、調和神アフラと敵対していたという。その国は鬼族という種族が住んでおり、神代の頃は東洋全体に影響力を持っていたとされている。しかし、数千年前に調和新アフラによって国ごと種族は滅ぼされ、今ではもうその極東の国は存在していない。


 そんな極東の国の武器が刀である。


 トーゼツ達が使っているような剣のように硬く、丈夫。刃こぼれしても問題なく扱える武器とは違い、繊細で、少しでも刃こぼれすれば使えなくなるのが刀である。


 ここまで聞いて刀にメリットはないように聞こえるかもしれないが、剣と刀には大きな違いがある。


 それは戦い向きか、殺し向きか、である。


 刀はどんな肉で斬り裂き。技量によっては自分よりも大きいモノすら断ち斬ってしまう。また、魔力操作に優れた者が扱えば、どんな扱い方をしても一切、刃こぼれすることがないという。


 そんな刀だが、神代から残る貴重な品としても、美術的に綺麗な工芸品としても、優秀な武具としても市場に時折出回っているが、そのほとんどが高額で一般市民には手が届かない代物になっている。

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