戦場の中へ 3
トーゼツは最初、困惑しながら軽くその任務依頼書を読んでいた。しかし、どんどん読んでいくうちに、どのような依頼内容か理解し始めたトーゼツは改めて最初から深く依頼書を読み始める。
「その様子からして……やっぱりあれかな」
テルノドは何か予測がついているようだ。
「俺は渡すように言われて来たから知らないんですけど、何の依頼なんです?」
一切、分からなかったロームフは真面目に読むトーゼツへと質問する。
「支配の厄災討伐の依頼書だ」
「えっ!?ど、どういうことですか?トーゼツはこの前、サルワと戦って逃げられたんじゃないんですか?その戦いで弱っている間に追撃するってこと!?」
「襲撃からもう三日以上は経ってる。サルワはそこらへんの人間じゃないんだ。それぐらいの時間があれば魔力量も、肉体的疲労、精神的疲労は完全治癒してるだろう」
ロームフの疑問にテルノドが横から答える。
「だったら、どうして今更、サルワ討伐依頼書なんて……」
サルワを討伐出来るタイミングはいくらでもあったし、サルワが更なる脅威となる可能性は初期の段階からあった。トーゼツはそれで厄災討伐に動こうと考えていた時に、今は放置でメイガス・ユニオンとのゴタゴタを解消するのを優先するべきと判断して、仙国で待機と命令したのは冒険者連合の方だ。
トーゼツ一人の意見、行動を縛って、勝手に判断して、それで勝手に依頼した冒険者連合にロームフは少し怪訝な表情をする。
もちろん、トーゼツも理不尽であるとは思った。だが、それも仕方のない事と感じる所はあった。
冒険者連合の顔であり、トップとして動いていた調和神アフラが消えたのだ。さらに本部は神都ごと襲撃を受け壊滅状態。ギルドの地方支部長によって今は運営されているが、中枢部分が無くなった冒険者連合に足並みを完璧に揃えられるとは思えない。
発言や行動があっちこっち行ってしまうのはどうしようも出来ない所なのかもしれない。
とはいえ、だ。
これまでも調和神アフラは万能ではないし、永遠不滅の存在というわけではなかった。不測の事態に備えて調和神アフラが居なくなった時の事を考えていなかったのだろうか?という疑問はある。
「まぁ、冒険者連合でもかなり混乱が起きてるんだろうな、それに──」
トーゼツはテルノドを見る。
依頼内容を見たからこそ、なんとなくだが察する。
テルノドは厄災研究をしている魔術師だ。サルワという存在に対して、彼女と戦っていたトーゼツよりも知識があるのはテルノドだろう。だからこそ、テルノドは次にサルワが取るであろう行動を予測し、それに合わせて冒険者連合に提言したのだ。
その提言に上が納得した。だから任務依頼書が出された。
…………ただ、その任務依頼書が回って来たのがトーゼツだったのは予測出来ていなかったようだが。




