戦場の中へ 2
どんどん絶望的な状況になっていくこの人間世界に対し、トーゼツは不安を覚える。
「サルワにアムシャの出現。調和神アフラの消滅に続いて天玉仙帝も落ちた。まだメイガス・ユニオンとの戦争も終わってない。……ったく、本当に人類滅亡が近づきつつあるのかもな」
ここから先、世界がどうなってしまうのか。トーゼツもその大きな不安からか、その不透明すぎる考えても仕方の無い未来の事をトーゼツは考え、予測し始める。
「ったく、良い休暇になると思ったのに……君と居るとトラブルが絶えないねぇ」
トーゼツの思考を遮るようにテルノドは呟きながら紙に何かを書いている。きっと今回の件の報告書でも書いているのだろう。彼にとっては今回の襲撃で死にかけたうえに余計な仕事が増えたのだ。愚痴など何度吐いても、吐き足りないことだろう。
「悪かったな、トラブルメイカーで」
「いやいや、逆に可哀想だなと思って。人生大変でしょ?」
「失礼な奴だな、テメェは」
テルノドの余計なお世話を軽く流しながら、トーゼツはベッドに座り込む。
今回、サルワを逃してしまった。しかも、彼女を倒す絶好の機会であったというのに、だ。このままサルワに追撃しに崩壊した神都へと向かいたいのだが──
(前の俺だったら考えなしに突っ込んでいた。が、今、俺はメイガス・ユニオンとの戦争が終わるまで動けない。くそッ、このままじっと待つことしか出来ないのか?)
何も出来ない事を歯痒く思いながらも、頭の中で自分の出来ることは一体何だ?と考える。
そこにバタバタと廊下から激しい足音が聞こえてきたかと思えば、ガチャリ、とトーゼツの居る部屋のドアが勢いよく、大きく開く。
「トーゼツ!大丈夫ですか!?」
その部屋に飛び込んできたのは、一人のエルフ。それはトーゼツの知っている顔であった。
「ロームフか、久しぶりだな!というか、神都侵略された時に無事、生き残っていたのか!?」
「はい、なんとか……。すぐにトーゼツに連絡しようと思っていたんですが、元々メイガス・ユニオン関係者ということもあって冒険者連合本部に拘束されていたんですよ!」
「そうだったのか、それは大変だったな。で?なんで拘束解かれて、俺の元へと来たんだ?」
「この書状を届けに」
そうしてロームフは一枚の封筒をトーゼツへ手渡す。一目見て、その封筒が冒険者連合公式のモノであると分かったトーゼツはビリビリとすぐに破って中を確認する。
入っていたのは任務依頼書。しかも、依頼主は冒険者連合となっていた。
「本部から公式に任務の依頼?しかも俺に?」
確かに優秀な冒険者のほとんどはメイガス・ユニオンとの戦争に出ているため、任務依頼を受けられる冒険者は現在、少ないだろう。とはいえ、トーゼツ以外にも動ける冒険者はいるはずだ。さらに、仙国がサルワに襲撃を受けた直後にこの任務依頼が出された。このタイミングも少しおかしい気もする。




