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それは、街ではミトラの凱旋パレードが行われ、トーゼツとメユーの二人が次の国へ向かっている時間軸に起こった出来事である。


 「あーあ、マジかよ。厄災がここ十年で一気に負けている。まさか、本当に人間の時代が来ようとしているなんてな。信じられんぜ」


 それは、黒いローブを身に纏い、フードを深くかぶった者。声と体形からして男であるというのが分かる。その隣をさらに二人の者が一緒に歩いていた。片方は同様に男だが、もう一人は方は女のようだ。


 女の方がその言葉に反応する。


 「あの最高神が次の時代を人間に託すと言ってるんだ。遅かれ早かれ、このような事態になるとは思っていたよ。人間が厄災全討伐して、悪心を殺すのも時間の問題さ」


 補足するように、もう一人の男が言う。


 「イルゼの言う通りだ。それぐらい予測出来た事。だが、厄災討伐は問題ではない。重要なのは、邪神様の復活と、人間時代の到来を防ぐ、または終幕だ。そのためには、我々の力を増強させなければならない」


 その言葉に、最初につぶやいた男が「はははッ」と軽く笑いながら返答する。


 「あぁ、分かってるよ、グランドル。だから、これを求めてここまで来たんだろ?俺たちは」


 そこは、刃の厄災が討伐された場所。地面はでこぼこになっており、隕石でも降ったかのようなクレーターがあちこちにあった。また、斬撃の形跡もあり、空中には霧散した魔力が強く残っていた。


 それだけで、どんなに激しく熾烈な戦いが行われていたのか、理解できる。


 だが、彼らはそんなものを見に来たわけではない。


 彼らの真の目的は―


 「っし、あったな」


 それは、地面に突き刺さる一本の大剣。


 刃の厄災が自分の存在を賭けた最期の一撃を放ったあの大剣であった。


 グランドルと呼ばれた男が、その大剣の前へと立つ。


 「さて、この力を受け継ぐのは、アンタの役目だろ?さぁ、手に握ると良い」


 「無論、分かっているとも」


 その言葉に促され、グランドルは大剣を強く握り、大地から抜く。すると


 「ッ!!」


 まるで、雷が自分に落ちてきたような、強い衝撃と力が彼に伝わってくる。


 「おおっ、おぉぉおお!!?!?」


 彼は複雑な思考が出来なくなり、周囲のことが何も分からなくなる。


 ここは何処で、自分が何者なのか。また、周囲にいる仲間の言葉は何も聞こえず、聞こうにも意識が定まらない。自分が立っているのか、座っているのか。はたまた、空中にでも浮いているのか。体の形は。脚はどうなっている。腕や手先は存在しているのか。


 それすらも、分からない。どうしようもできない。


 ただし、これだけは分かった。


 死んでもこの剣だけは離すな、ということだけが。


 そして、気づけば握っていたはずの大剣は消えていた。


 そして、心には謎の充足感があった。


 肉体は、先ほどとは比べられないほどの魔力量に、多少ながらも漂う狂気の力。


 「これで晴れてお前も狂者きょうじゃの仲間入りだな」


 そのように、男から言われるグランドル。


 「これが…刃の厄災の力か……!ははははははッ!これは良いではないか。これまでには感じたことのない力が、私の体を巡っていく!!!!!」


 今ならば、なんでも出来る。そのように錯覚してしまうほどの力を手に入れたグランドルは大きく笑い、叫ぶ。


 「さて、これで目的は達成した。じゃあ、イルゼ。この新しい力を手に入れ、調子に乗っているグランドルを拠点まで送り帰してやってくれ」


 そのようにして、一人、立ち去ろうとする男。


 イルゼは言葉をかけ、止める。


 「ちょっと待ちなよ。送り帰すのは問題ないけど、アンタはどうするのさ?」


 足を止め、彼は静かに質問を返す。


 「少しちょっかいをかけにいくのさ。神々に愛され、対等と認められた、人間の時代の幕開けを任された男、トーゼツ・サンキライにな」


 フードの隙間から少し見えたその表情は、不気味に笑っていた。

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