次のステップ 2
アニが今後、自分の発言を守ってくれるかどうか、それは分からない。しかし、ここでトーゼツと戦うことがあれば、アムシャが介入するということは伝えた。それだけでもかなりの抑止力にはなるだろう。
彼女の言葉にアムシャは「懸命な判断だ」と言って踵を返し、この空間から去ろうとする。しかし、アニは「少し聞きたいことがあるんだけど」とアムシャを引き止める。
「どうした?」
「アナタの目的は何なのさ?私と同類かと思っていたんだけど、アフラみたいにこの世界の人類に対して可能性を見ているようにも見ている。アナタの目的は何なの?」
それを聞いて、アムシャは内心、驚いていた。
外界の者はこの世界の仕組みをある程度、理解しているからこそ、他世界への移動を可能としている。もちろん、その中には例外がいくつかあるが、大抵の外界の者は核心を掴んでいるはずだ。世界とは、人間とは、物理世界、概念世界、精神世界の違いとは。この世界における、本当の神とは……。
それを理解しているのであれば、自分の役割を理解していてもおかしくはないはずなのだが、アニはそれを理解していないらしい。
「意外だな、そんな事も分からないとは」
「まぁ、私は見ての通り、世界と融合したことで感覚的に分かっているだけだからね。だから上界、下界関係なしに世界を渡れるのは知識とか技術とかじゃなく、そういう機能が付与されているみたいなもんだし、それに……アナタのやりたい事と役割は違うでしょ?」
「……そういうことか」
そうしてアムシャは考える。
自分の役割は理解している。自分は残った最後の神であり、神代の守り神である。だからこそ、自分は調和神アフラの計画とは対立する存在であり、そしていつかトーゼツと──
では、それが自分のやりたいことか?そう問われれば──
「そうだな、お前の言うとおり、案外、私はお前と変わらない」
アニの方へと振り返り、彼女の目を見て答える。
彼女から見たアムシャの眼には自分と同じモノが渦巻いていると感じた。
それは自分さえ楽しければそれで良い。他者も自分も、世界すらもおもちゃ箱。役割は最低限に、あとは全力で遊ぶことしか考えていない眼であった。
「あはっ!やっぱり私と同類じゃないか。どうせ、トーゼツにちょっかい出すなっていうのも、自分のおもちゃに触れて欲しくないだけじゃないの?」
「……ははッ、そうかもな」
そう言って、今度こそアムシャは立ち去っていく。
「トーゼツには手を出すな、か。まぁ、他にもアナト、サルワにアムシャ……まだまだ面白そうなモノはいっぱいだし、トーゼツに固執する必要はないね!それでもまだ、トーゼツについていった方が面白いことはいっぱいあるかな?」
そうして彼女も、この特殊空間から出て、元の世界へと移動していく。




