破滅 23
トーゼツとサルワの戦いが終わったその直後、コーゲンミョウラク内の何処か──
「あちこち凄い事になってるなァ。サルワも、ファールジュも、暴れまくったようだね。まぁ、私も暴れさせてもらったんだけど」
都市の惨状にニヤニヤと楽しそうに嗤うのはイルゼであった。
そこにコツコツ、と足音を立てて現れる一人の影。
黒いローブを纏い、深くフードをかぶっているため、何者か分からない。しかし、声色からして男であることだけはハッキリと分かる。
「久々だな」
イルゼに対し、彼は声をかける。
「おう、アンタか。アルウェスが居なくなってから顔を出さなかったけど、どうしてたんだい?」
「サルワやら、アムシャやら、計画外の奴らが現れたからね。少し様子見する必要があった。けど、こうして接触するタイミングがあって良かった」
男はそう言って都市を眺めるイルゼの横へと並ぶ。
「ここからどうするつもりだ?今、私たちはサルワの部下として動いているわけだし、アンタの計画を諦めるしかないんじゃないかい?」
厄災の影響によって精神が狂わされているというのもあるのだろうが、イルゼは心の底からローブの男を馬鹿にするように、ニタニタと嗤いながら問う。
男はそのイルゼの態度に全く何も感じないようで、淡々と話を続ける。
「いいや、問題はないさ。それどころか、サルワの登場は計画外で、私の研究の中ではあり得ない存在だった。だからこそ、利用のしがいがある。私は計算通りの物事が運ぶのも、行き当たりばったりで上手くいくのも、好きなんだ」
「ははッ、人生を全力で楽しんでいるみたいで良いね。それじゃあ、これからどうする?厄災に適正のある人間を集めて取り込ませていたけど、今後はどうするつもり?」
「サルワに全部取り込ませても良いかもな。もしかしたら、とんでもなく面白い事が起きるかもしれないぞ?」
ふわり、とフードが風で浮かんだ瞬間、見えた彼の表情はとても楽しそうに笑うモノであった。
「ということで、今後はサルワの成長を促しつつ、様子見するとしよう。最終的にどうするか、決まるまでは自由に動くと良い。私も、私のやりたい事をするよ」
そう言って、ローブの男はイルゼの前から立ち去っていく。
イルゼも追いかけることも、さらに問う事もなく、ただ去っていく姿を見てるだけであった。
「ったく、あの人も何考えてるか分からないけど、とんでもなく面白い事、か」
一体、何が起きるのか。彼の頭の中ではどのような未来を描いているのか。今のイルゼには一切、分からなかった。
しかし、彼のような者は自信を以て発言したのだ。
であれば、それはきっと必ず──
イルゼは空を見上げる。
あの世だったり、地獄だったり、天国があるとは思っていない。
だが、彼女は呟く。狂いながらも、ほんの少し残った理性で。
「アルウェス、お前の望んだ世界が何だったのか。私には知らないし、お前の世界を創り上げようとは思えない。けど、地獄みたいな楽しい世界になれそうだぜ」
そう言って、彼女も立ち去っていく。天玉仙帝が敗れ、明日がどうなるかも分からない仙国から。




