破滅 22
さすがのトーゼツも生きているとは思っていなかったようで、驚きながらも、すぐさま指輪の力で炎のような赤色をした刃と氷のような青色の刃の双剣を取り出し、戦闘態勢を取る。
サルワはふらふらとしながら、支配の力で肉体細胞の治癒能力を強制的に引き上げ、火傷に破損した内臓、骨をみるみると治癒していく。だが、その治癒スピードは明らかに低下しており、本来の権能の力を出せない状態のようだ。
「なんとか……やってやったぞ!!」
それは無意識の行動であった。
トーゼツの自爆攻撃に何も思いつかなかったサルワであったが、トーゼツとぶつかるその瞬間、無意識のうちに自分に襲いかかってきた熱量、質量を支配の権能で操作し、ギリギリの所でエネルギーの方向を逸らすことに成功していたのだ。
それはきっと、必死だったからこそ、生物としての本能で動いたモノだったのだろう。
しかし、それで生き延びることが出来たのだ。
「しぶとい奴だな。だが、その様子だとかなりの満身創痍の状態だと見える。そのまま死んだふりでもしておけば、良かったのにな」
そう言って、トーゼツは双剣を握りしめてサルワへと接近する。
サルワは肉体的、精神的にもダメージを負い、魔力消費も凄まじいものだろう。それに対し、トーゼツは一度死んだことで肉体ダメージをゼロに戻す事に成功している。また魔力消費量はサルワと同等ぐらいではあるが、想いの力も使えるようになった彼にはまだ戦える余裕がある。
どう見てもトーゼツの方に分がある。
無論、サルワもその事は周知している。
だからこそ──
「ッ!!」
サルワを中心に大地に魔法陣が展開され、黒い風が吹き出す。
トーゼツの魔術を知識を以て、理解する。これは空間転移の魔術である、と。
「逃がすかよ!!」
トーゼツは双剣に魔力を通すと、すぐさまサルワに向かって駆け出す。
しかし、魔術の展開は止まらない。
まるで機械の歯車のように、魔法陣内部の図形や文字、数字が互い呼応するように動き出す。それに合わせて黒い風も吹き荒れ出し、サルワの身体を包んでいく。
「じゃあな、姉弟揃って化け物だったか。やっぱりこの世界は実に面白い!この私が支配するに値する素晴らしい世界だ!!それじゃあ、次に会う時までさよならだ。トーゼツ・サンキライ」
冷気を宿した青色の刃の剣を振り上げ、サルワに向かって素早く振り下ろす。
だが、間に合わない。
ギリギリ刃に斬り裂かれそうになったサルワの身体は、シュンッ!とあっという間に消えていく。
振った剣を大きくスカしたトーゼツは態勢を崩しながらも、仕留めきれなかった悔しさを溢れす。
「くそ……!逃げられた……逃げられちまった……!!」
一人残された炎の世界で、彼は叫ぶ。
「ふざけやがって……支配の厄災ッ!!!!!」




