破滅 21
サルワは逃げようとする。が、落下していくトーゼツの狙いは外れない。明確な意思を持って、正確に彼女を追いかけ続ける。
回避するのは難しい、そう判断したサルワは魔力で自身を囲むようにドーム型のバリアを展開する。そこからさらに無詠唱、無魔法陣で中級、上級レベルの防御魔術を発動。バリアの硬度をさらに上げていく。
「そう来ると思っていたよ」
トーゼツはそのように呟くと、再び空間に穴を開け、魔布を投げ入れ、エルドの杖を取り出す。
「お前の力を借りるぞ、エルド!!」
杖から数えきれない光の球体が飛び出し、サルワに向かって飛んでいく。その光はギラギラと輝き、太陽のように感じるほどの熱量を持っていた。
「ッ、これは……!」
ドーム型のバリアは最初こそ、耐えていたモノの次第にピキ、ピキピキと音を立ててヒビを割っていく。魔力をさらに送り、破壊されそうになった箇所から修復を試みるのだが、修復力に対し、攻撃のスピードに物量、破壊力の方が圧倒的に上回っているようだ。どんどんヒビが増えていく。
よりバリアに魔力を送るのだが、その間にもトーゼツとの距離は縮んでいく。その距離はもう百メートルを切っていた。
「俺と一緒に死ね、支配の厄災!!!」
バリアの修復は間に合わない。
避ける、逃げる……いいや、無駄だ。もう既に時間も、余裕もない。
現状を打開する策は思いつかない。
サルワは叫ぶ。
「キサマの自爆で死ぬなんて……この私がッ!!くそがッ、こんな所で…!こんな所で……!ざけやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
その瞬間だった。
ドーム型のバリアがバリンッ!と音を立てて破れ、凄まじい熱量と質量を持ったトーゼツがサルワへ無慈悲にも衝突する。その熱と重みにサルワは耐えきれず、ぐちゃり、と肉と肉がぶつかり合う音が響くとドォーンッ!というけたたましい衝撃が響く。
都市の建物は全て破壊されていき、地面は崩れる。クレーターのような窪みが生まれ、その中心地から大気との摩擦で発生した熱が周囲の空気へと伝搬し、炎の世界が広がっていく。
まさに地獄絵図のような場所で、生命活動を続けるモノなど居ないと思えた。しかし、ガラガラと崩れた地面の中から這い、立ち上がるのはなんと死んだはずのトーゼツ・サンキライであった。
「ふぅ、自分の能力を意識して自爆したとはいえ、気持ちの良いモノじゃないな」
サルワとぶつかった衝撃で裂けた肉、内臓に、折れた骨。燃え焦げていた髪、皮膚がまるで逆再生でも起こっているかのように治っていく。
そう、彼の固有技能である『不屈の魂』によって復活したのだ。
「さて、さっさとこんな暑い所から出るとする──」
トーゼツが去ろうとした時だった。
彼と同じく、這いながら必死に立ち上がるもう一つの影があった。
「はぁ……はぁ……!」
身体全身を焦がし、全身から血を流しているのはサルワであった。




