破滅 18
トーゼツに負けじと挑発するようにクククッ、と歯を見せて笑いながら、彼を見下ろす。
「本気になれば避けることも、防ぐことも出来たが……まぁ、試しに攻撃を受けてみればこれだ。おいおい、この程度か……?ったく、もう少し期待していたんだがな」
彼女の挑発が本当かどうか、それは誰にも分からない。だが、サルワが大したダメージを負っていないという事実は確かの話だ。
それに対し、トーゼツはさらに挑発を返す。
「ははッ、ただの魔力球でこれほどのダメージを負ってるなら、本気の攻撃をぶち込んだその時は、どうなっちまうんだろうなァ!」
二人の目つきは更に鋭くなり、睨み合う。これは先ほどのように様子見の眼ではない。明確に自分の敵として認め、殺し合いをする覚悟をした眼であった。
「調和神アフラを圧倒した私にまだ勝てると思っているのが滑稽だな」
「神は人類に世界を託したんだ。神を倒したからって、人間を舐めるなよ!!」
そうしてトーゼツは二撃目を打ち込む。
魔力に想いの力を両手に纏い、サルワの腹部めがけて一気に掌底打ちを決める。
これも正面から受けるつもりだったのだろうか。
サルワは動かない。
しかし、結果は彼女が考えていたようなモノにはならなかった。
「ッ!!」
その掌底打ちは脂肪、筋肉に衝撃を与え、内臓を引き裂き、骨を砕いていく。脚はその力を耐え切ることが出来ず、ズザザザッ!と地面を擦りながら数メートル後方へと下がらせる。
それでも強がろうとしたのか、ニヤリ、と嗤って見せるモノの「ごふッ!」と耐えきれず口から血を吐き出してしまう。
「おいおい、喰らってるじゃない」
「ちぃッ、甘く見てたら調子乗りやがって……!」
サルワは支配の厄災のシンボルであるセプターを具現化し、トーゼツへその先を向ける。
「ここから本気でやってやるよ!!」
重力場を支配し、トーゼツに強い負荷を与える。
「ッ!!」
ずしり、と想像もしなかった重みがトーゼツに襲いかかる。が、すぐさま魔力と想いの力で肉体強化を行い、どんどん上がっていく重力に耐えていく。
(これ以上、重力を上げると時間と空間が歪んで何が起こるか分からんな。しかし、そこまで重力を引き上げてもなお、耐え切るのか!!)
舐めてかかっていたとはいえ、さすがは人類最強であるアナトの弟という事か。
「押しつぶせないんだったら、串刺しにするとしよう!!」
地面からまるで竹のように生えてくるのは凄まじい数の刃。どんどん地面から生え、天に向かって伸びていくその刃たちがトーゼツに向かって襲い掛かる。
過去に戦ったことがあるからこそ分かる。これは刃の厄災の権能である、と。そして、討伐した時よりも威力が数段に跳ね上がっていることにも察する。
(支配の厄災に取り込まれたのちに、さらに権能が成長したってことか……!)
だが、対処不可能な攻撃ではない。
トーゼツは重力負荷に耐えながらも、生えてくる刃をするりと上手く躱して、素手で殴り折っていく。




